悲しみの海

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周りは静寂に帰ったが、決して寂しさの余韻はない。白い月明かりに照らされた黒い海が波を打ってわたしを無心に戻してくれている。 ふっと彼女の方を見た。 月明かりのお陰で分かったが、彼女はほんの少しだけこちらに向いている。目が悪いからか、顔ははっきりと見えない。鼻柱と唇だけがシルエットとなってくっきりとしている。 銀粉が散らされし黒き海の上に立ち、ゴッシェナイトの如く煌めく名月に照らされた彼女の目から、まるで宝石を落とすかのように涙をポロリと流しているような気がした。
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