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だからわたしは理性の蓋を開け涙を流させた。
涙がダムから放水したかのような勢いで、心を苦しめたあらゆる負の感情が湧き出た。
そこからどのぐらい泣いたのかはもう覚えていないが、音楽や彼女のことなど、全てを忘れてしまうぐらい声を荒らげて号泣した。
でも、泣いたからと、怒られて人前で感じるような羞恥心や、泣くことに対する自分の無力さは一切感じなく、何故だか安心感さえ覚える。
あの音楽、あの音楽がわたしを慰めているのだ。
誰にも理解されず、悩みを聞いてもいい加減な答えしか帰って来ず、その負の感情の蟠りをあの音楽が解して、
「もう、いいんだよ」
そう言って悲しみの海の中で溺れる自分を助けてくれている感じがした。
弱くてもいいんだ。その時は泣きたいだけ泣いて、そこからまた強くなればいい。転げたならまた立ち上がる、波は迫ればまた戻る、だからもういいんだ。
そう助けられたわたしは感情が落ち着き、先程まであった負の感情があっと、波に攫われて海へ流されてしまった。
気づけば何時間も吹いたであろうあの音楽が終盤に入り、最後の音を鳴らしていた。
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