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なんだか夢を見ているみたいだった。
初めて見た時、一瞬で目を奪われた男性。
芸能人やスポーツ選手に一度も夢中になったことのない俺が、生まれて初めて推しを見つけたような気分だった。
そんな憧れの彼が、今俺の目の前に座っている。
彼は特に言葉を発することなく、美しい指でコーヒーを口に運ぶ。
俺は食事をしながら、そんな彼の姿を時折盗み見ていた。
ご一緒していいですかとは聞かれたけど。
一体何を話せば良いのか。
だって俺らは顔見知りではあるけれど。
こうして面と向かって話すのは初めてで。
つまり、ほぼ初対面なのだから。
初対面……。
そうだ。
まずは自己紹介をして、名前を知ってもらわないと。
そう思って口を開こうとしたら。
「最近、ここで会えませんでしたね」
まさかの彼からの言葉。
俺はゴクンと息を呑んだ。
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