美しい人

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「あー……、時間が合わなかったんだと思います。 最近夜勤の時は残業になることが多くて、ここへ来るのは8時過ぎになっていたので」 うちの会社は8時が始業だし。 伊武さんは、その時間には会社にいるはずだから。 「そうだったんですね。 と言うか、驚きました。 あなたが僕と同じ会社だったなんて」 「俺も驚きました」 この辺りは会社がすごく多いから、まさか同じ会社だとは……。 「お名前は、なんとおっしゃるんですか?」 伊武さんが尋ねた。 「倉木 (なぎさ)です。 製造部の第2課にいます」 「第2課……。 ーと言うことは、沖田課長のところですね」 「はい、そうです。 あなたは、どちらの部署なんですか?」 「僕は開発部です」 「開発部……」 やっぱりそっちの方だったか。 きっと理系で、頭が良いんだろうな。 「あ、それと。 名前は伊武と言います。 伊武(いぶ)紫苑(しおん)」 「紫苑……」 綺麗な名前……。 この人にピッタリの名前かもしれない。
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