愛の深い人

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「俺、前にも紫苑さんに話したと思うけど。 過去に彼女に2回振られてんだよね。 俺が物足りないからっていう理由で。 でも、もしかしたら物足りないと思ってたのは、彼女だけなんじゃなくて。 実は俺も……。 いや、むしろ俺の方が物足りなかったのかもしれない」 今までそんなこと、考えたこともなかったけど。 「だろうな」 紫苑さんが、さも当然のように言った。 「渚が恋愛に受け身なのはさ、受け取る器があるからなんだ。 でもその器ってかなり大きいから、相当愛情を注がないと満足出来ないんだよ」 「えーっ! うわぁ、マジか」 「そ。だから、ちょっとやそっとの相手だと、渚の方がつまんなかったんだと思うよ」 信じたくないけど、そうなのかもしれない。 俺って、彼女に対してかなり反応悪かったと思うけど。 それは、俺の満足するラインまで相手が来ないからっていうのも要因だったんだ。 「だとしたら、もしかして俺って……。 実はかなりのワガママ野郎なのかな?」 自分からは積極的にいかないくせに、相手からの大きな愛を期待してしまうだなんて。 「いいじゃん、ワガママで。 そんなワガママなら大歓迎だよ。 俺は心置きなく渚を愛せるし。 愛したら愛しただけ、渚は応えてくれるし。 こんな最高な恋人って、他にいない」 「紫苑さん……」 そんなことを言ってくれるのは、多分紫苑さんだけ。 そんな相手に出会えたなんて。 まさに奇跡かもしれない。
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