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一瞬、時が止まったのかと思った。
自分の目を疑いそうになるけど。
それでも俺が、あの人を見間違うはずがなかった。
あれだけの存在感がある眉目秀麗な彼を……。
カフェにいる時とは違って、作業服を着ている彼。
社員食堂に彼がいるのはなんだか似合わなくて、やけに異質で浮いている。
彼が着ている作業服は、現場の人達のとは違うものだから。
総務部とか、開発チームの所属になるのだろうか。
いずれにせよ大卒だろうし、俺ら現場の人間とは収入からして違う部類の人なんだろう。
同じ部署の人なのか、数人の男性と食事をしている彼。
会話にはほとんど参加していないようだ。
いけないと思いながらも、俺は食事をしながら、遠くの席に座る彼を自然に目で追ってしまっていた。
しばらくして食事を終えた俺は、食器を返却するところへと運んだ。
そして、チョロチョロと流れる水で食器を軽く洗い流していた時だった。
俺の隣に立つ背の高い男性。
そのあまりに白く美しい手に目を奪われて。
なんとなくその人の顔に目を向けた次の瞬間。
思わずゴクリと息を呑んだ。
俺の隣にいたのは……。
カフェで見かけるあの彼だった。
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