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「何? お前、伊武さんと知り合い?」
先輩に声をかけられて、俺は思わず「えっ?」と声を上げた。
「伊武……さん?」
「うん。今、挨拶してたじゃん」
「あ、いや。知り合いと言うか……。
先輩は知ってるんですか?」
俺の問いに先輩はうんと頷いた。
「一応同期なんだよ。
こっちは高卒で向こうは大卒だから、途中から研修場所が変わったし、話したことはないけどな」
先輩は俺よりひとつ年上だから。
あの人は、俺の5歳上ってことになる。
つまり、今年で25歳。
もっと若いのかと思ってたけど。
そうか。
そんな大人の男性だったんだ……。
「伊武さんってかっこいいよな」
先輩の言葉に、なぜか胸がドキッと跳ねた。
「同期の中でも、一際すごい存在感を放ってたよ。
女の子達もかなり騒いでたしな」
それは容易に想像出来ることだ。
あの容姿なら、相当目を引いただろうから。
「でも伊武さんって物静かだし、気軽に話しかけられる雰囲気でもないし。
みんな遠目に見てたって感じだったなー」
遠目に見てた……か。
もしかして俺も、その女の子達と同じ事をしているだけなのかな。
なんだかそれって……。
「そんな伊武さんがお前に会釈してたから、すげぇ意外だった」
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