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意外?
彼がそうするのは、意外なことなのか?
それを知ったら、なんだかくすぐったい気持ちになった。
彼とは当然話したことなんてないし。
どこの誰なのかも知らなかったけど。
それでも彼が、俺の存在を認識しているのは間違いないと思っていて。
今日のことでそれが確信に変わって。
それが、やけに嬉しかった。
その日以来、俺は無意識に社内で彼を探すようになった。
すると時々だけど、彼の姿を見かけることがあった。
一番緊張したのは、C棟へと続く長い廊下で見かけた時だ。
どんなに遠くにいてもわかる彼。
もう少しですれ違うと思うと、心臓の鼓動のバクバクがすごくて。
そして、彼との距離があと5メートルになった時。
俺に気づいた彼がにっこりと微笑んだ。
その笑顔の綺麗さと言ったら、とてもこの世のものとは思えないほどの美しさで……。
ドキドキしていたら、彼は軽く会釈をして俺の横を通り過ぎて行った。
その直後、ふわりと香る爽やかな匂い。
碧く深い海のような。
まさに彼の存在そのままのような、印象的な香りだった。
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