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そう言って、クロックスの遺体の側にあった巨木を指差したオリバー。保護色と化したクロックスの一部なんて、見て分かるものなのかと不安になったけど、不自然に幹から出た棒状のものがある。
「そう言えば、さっきパブロフが〈アスタロスの体液啜って成長する〉とか言ってましたね」
「まぁ正しくは、獲物であるアスタロスにストローと呼ばれてる部位を突刺して、獲物が死ぬまで寄生し続けるアナトなんですよ」
「アスタロスは抵抗しないんですか?」
「自分より小さな獲物は狙わない上に、大抵寄生中に別のアスタロスに食われてる事が多いですから。どうなんでしょうかね? 寄生対象のアスタロスと争ってるところは見たことありません」
つまり獲物を見つけた後、相手が死ぬまで寄生した後、繁殖してたりするんだろう。オリバーの話を聞いてる限り、相手が死ぬまで寄生出来るケースの方が稀っぽいけど……。そこは世界が変わっても、弱肉強食の世知辛さで成り立つ生態系のバランスがあるのだろう。
「それじゃあ木に寄生することは?」
「今回初めて見ました」
「樹の性質が変わったからかな?」
「その可能性は十分ありますね」
今まで生えていた樹は葉が黒く、太く立派な幹は焦げ茶色に見えるが、見上げた先の小枝は黒ぽい。
まるでアナトのような雰囲気が__。
――いや、ちょっとまてよ――
これは、もしかしてもしかするかもしれない。
だとしたら、白い巨木と化した今。
クロックスがアスタロスと認識したのも分かる。
「オリバーさん。さすがに白い巨木に傷付けたら、怒られますよね?」
「聞いてみましょうか」
祝福を受けた土地と聞いてたので、てっきり反対されると思ったんだけど……。戸惑う俺の代わりにクロックスの死骸を調べていたピブルとパブロフに声を掛けたオリバーは、難なく許可を得てくれた。
(伝承を重んじる世代じゃないのかな?)
(御神木と言う概念もなさそうですね)
お陰で周囲と揉めることなく、鳳炎に頼んで一枝葉がついてるモノを入手したものの。植物とは思え無い硬さと淡い白乳色は、鉱石の装飾品に見間違えるレベルで困惑する。
(白色化する前の枝も持ってきましょうか)
(うん、全然違いが分からないや)
強いて言えば、白色化する前の方が植物らしいと思ったぐらいだろうか。暫くして見比べ用に、まだ白色化してない枝を鳳炎が加えて持ってきてくれたのだが__。
見比べのために枝を近づかせた結果、白色化してない枝が白色化してる葉に触れてしまい。あっという間に白色化してしまったのだから驚きだ。
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