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「通りで繁殖力が凄いはずですね」
「風で木々が擦れ合ったら一発じゃないか」
「見比べようとしただけなのに……」
「どんまい、フレムさん。結果オーライですよ」
様子を見ていたパブロフとオリバーの反応とは裏腹に、目論みとは違った結果を得て終わった身としては複雑な心境だ。ピブルに励まされ、もう一度見比べをしようとも考えたが止めた。風が出てきた影響で、元々の木が周囲からなくなりつつある。
「引き返そうか? 祝福の欠片を探すには、もっと施設から離れないといけなさそうだし」
しかし、誰も何もウォームの問いかけに答えないばかりか。何故か護衛役として付き添ってるはずの俺に、視線が集中しているんですけど__。
「フレムはどうしたい?」
「へ?! そこは科学者の意見を聞くべki__」
責任から逃げるようにピブルとパブロフへと視線を泳がせるが、目が合った瞬間。自分達にはそんな権限は無いと首を横に振られるし、オリバーに至っては「お好きにどうぞ」と言われてしまった。
(皆さん、寛大ですね)
(それは絶対違うよ、鳳炎)
誰も口に出して言わないけど、他力本願じみた期待の眼差しが痛い。でもこのまま引き返す気にもなれなかったのは、まだ身の危険より好奇心が勝っているからだろう。
まぁだからと言って、意見したら責任も負わなければならない訳で……。そんな度胸がない俺は、ウォームに視線で助けを求めた。
「それじゃあ、もう少し奥地に行って。危険を感じたら、即座に撤退するって条件でどう?」
「異議なし」
要するにピブルが求める物が見つからなくても、危険を感じ時点で帰るということだ。それも実践経験のあるウォームの基準なら安心できると、俺が小さく挙手して賛同したところ。皆それにならって挙手し、反対意見が出なかったことから更に奥地へと踏み込むこととなった。
【地上探索/完】
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