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その間、「助かった」と呟いて態勢を立て直した俺は、真っ白な森に包まれた真っ白な大地を見渡して息を呑んだ。
明らかに空気が違うと言うか、踏み込んではいけない神聖な領域に迷い込んでしまった感がある。
その最もな要因は、周囲の明るさだろう。
――木々が白いだけで、
こんなに明るいものだろうか?――
俺は龍碑の背に乗ったまま、指示を出して1本の巨木に近付いて観察を始めた。表面は植物と言うより鉱物の彫刻で、一見冷たそうに見えて常温。
まさに外気より超えない温度なので、外気が冷えれば冷えていくのかもしれない。
――不思議なもんだな――
ひとまず危険は感じないので、龍碑の背中から降りると、聞いた事がある音が再び足下で鳴った。
調べてみると、今度は近くに白いドングリのような形をした樹の実を発見したので。幾つが拾って、1つ試しに踏んでみると予想通りの結果となる。
(御主人、皆さんをお呼びしますか?)
(いや、拾いながら先に進もう)
俺でも違和感を覚え始めたので、これがウォームと鳳炎が言う【強い力】というヤツなんだろう。
不用意に近付いていいとは思えないけど、仕事で同行している以上成果がなければ今後は無い。そうなると、せめて逃げ帰ってもよくやったと言われる成果を独り占めした方が好都合というものだ。
(何か近付いてくる気配を感じたら教えて)
(分かりました)
腰を落として、見つけた樹の実を袋に入れていく単純作業。ガラス玉にしては植物的な繊維を感じる手触りが不思議で、大小様々な形の樹の実の中には芽吹いてる物もあった。
調べて違いが分かればいいけど、拾った現場には白い巨木と白い落ち葉に覆われた地面ぐらいしか見当たらない。もし研究するための技術が足りなかったら、現場に居合わせた俺達ぐらいしか分からない事になってしまうだろう。
――試しに埋めてみるか――
単純な閃きだが、何の道具も持たない俺が現地で確かめられる事は限られている。まずは地面を覆う落ち葉をかき分け、黒っぽい大地の表面を素手で軽く掘り下げると芽吹いていた樹の実を1つ置いて、土をかぶせる前に若木へと成長。
それを見ていた鳳炎が、立派に成長した若木を見上げて俺にテレパシーを送る。
(土の採取も必要になりましたね)
(うん)
でも採取する前に、思わぬ方角からパキっと樹の実が踏まれた音がして緊張感が走る。
――何か居る――
息を殺して耳を済ませると、再び樹の実が踏み潰される音がして身を潜めた。
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