第76話/白き領域の守護者

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(鳳炎、ウォームに撤退するよう伝えて) (畏まりました)  その間、近付いてくる気配に恐怖を感じてくるけど慌ててはいけない。俺には鳳炎と龍碑がいる。  直立不動のまま警戒を続けていると、ウォームと連絡が付いた鳳炎からテレパシーを受ける。 (あちらも異変に気付いたようです) (早いとこ逃げて欲しいな)  ウォームが異変を感じるレベルは、恐らくLiderと危機感を共有出来ない些細な違和感(もの)だろう。予定してた探索時間をオーバーしてた時点で、引き上げれば良かったと内心後悔するものの。好奇心が勝ってしまったのだから仕方がない。  今は近寄ってくる相手を何とかするしかないと身構えていると、視界に白い一頭のケンタウロス__いや、違う。六本足の狼ウロスがゆっくりと此方へ近寄って来た。 (人外がいるなんて聞いてないよ!?)  しかもテレビで見たヘラジカ並のデカさだ。  全体的に白いことからアナト類ではなさそうだけど、右手には鋭く長い槍のような白い枝を持ち。顔を守り隠すように狼の頭を毛皮ごとかぶっている姿は、殺る気まんまんにしか見えず、一定の間合いを保つために俺が一歩後退りした時だった。 (敵意は無さそうですね) (何処が?!)  突然鳳炎が呑気な事をテレパシーで言ってきたので、思わず懇親の突っ込みをテレパシーで返した。  でも鳳炎は、冷静に相手を観察して助言する。 (尻尾をよく見て下さい。横に振ってますよ) (――ホントだ)  だけど狼の被り物で顔色は伺えないし、自分より大きな存在が武器を所持してる時点で怖い。大体尻尾を振ってるから喜んでるとか、俺達が知ってる犬の常識が人外や異世界で通じるのか不明である。  ――言語が通じるといいんだけど……。  何を言っても通じない気になってしまうのは、相手の表情が全く読めないからだろう。対応に困っていると、スッと俺の前に出た龍碑が構わず前進してくる相手に低く唸って警告。  すると相手は、それを理解したように足を止めると、被り物だと思っていた狼の耳が動いた。  どうやら撤退を始めたウォーム達の身に何かあったらしい。耳を澄ますと、俺達が来た方角から慌しい音が響き。不愉快だと言わんばかりに皺を寄せた人外がスタートダッシュを決めたので、俺は急ぎ龍碑の背に跨って後を追う。  ――敵じゃない?――  相手を見た目だけで判断してはいけないとは思うけど、自分が知る常識は通じない異世界では意思の疎通が出来ないと恐怖を感じてしまう。第一印象が悪かったら尚更だ。  すると鳳炎が、人間(ひと)の嗅覚では得られない情報から1つの可能性を見出してくれる。
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