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「あの、ご説明しにくいのですが……。恐らく天罰と同様、認識の違いが生じていると思います。我々は死ぬと鉱物となるため、世界によっては魔法生物ような扱いを受けていますので。人間の言う病の基準とは異なるとお考え下さい」
「え?! あ、そうなんですね」
言われて見れば、彼等は俺達が言う〈人間〉とは違う。魔法が使えない英里だった経験もあって、尚更疑問を抱かないだけなのかもしれないけど……。
「まだ直接死に様を見たことがなくて……。自覚が足りず、すみません。失礼しました」
「いえ」
「此方としては、その方が有難いです」
けど俺の些細な疑問から、この世界の人種差別を知る切っ掛けになるとは__。
さすがに不快感を与えたのではないかと、慌てて頭を下げたところ。穏やかな表情でルシウェルと連れの男性が許してくれたので、俺はホッと胸を撫で下ろした。
「それにしても、朝っぱらからアポ無しで来ることあらへんやろ?」
「申し訳ありません。トラブルという程のことではないのですが、思いのほかエネルギーの補充に時間がかかりそうなので。今後の予定をお聞かせ願いませませんか?」
ストームが話題をそらすように愚痴を溢すと、ルシウェルの連れの男性が馴れたように訳を伝えて質問を返した。
「そう言えば、サンダーが異動した後の事を決め兼ねてたよね?」
「しわ寄せ早すぎやろ」
極めつけにストームの緊急呼び出しが鳴り響き、問題山積み感が凄い。
「ねぇ、ウォーム」
「ん?」
「今の内にグレイと合流した方がいいよね? WPにこれ以上借りを作るのも難だし」
「そうだね」
予定の急変を察した俺は、建前を口実にラーリングとの約束を優先しながらも、自分の都合で交わした約束も守ろうと提案。
地元の人間の上、Liderの関係者とならば庇う必要もない。と思うところだけど、俺から裏切るつもりは今のところ無い。
「ほんならワイは、何とかエネルギー寄せ集めて1機ぐらい飛ばせる用意しとくわ」
「それは有り難いけど……。WPが目を光らせてるから車で移動してね」
「__へ?」
用が済んだとばかりに立ち上がったストームが、当たり前のように縁側に向かって歩き出したのでウォームが忠告。
空と共に生きる風の民だから仕方ないとは言え、惚けた反応を見せたストームを尻目に俺から「二台程お願いします」と注文した。
「ワイの方が早いで?」
「それでWPに兎や角言われたら、今度は僕がストームを置いていくからね」
ーーあ、こりゃあ根にもってるな。
グレイを手助けしてくれたのは有り難いけど、その場の流れでストームに置き去りにされたウォームは、相当面倒なことを引き受けた形になったのだろう。
腕を組んでツンとした態度を見せた仲間内を前にして、さすがに空気を読んだストームが主導権を譲るように黙った。
「フレムは、改めてムグルに連絡して」
「グレイを連れ帰ってもいいの?」
「はい、問題ありません」
ウォームの指示に従う前に確認のため質問を投げかると、俺と目が合ったルシウェルが小さく微笑みかけて答えた。
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