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「でなきゃ謝罪に来ないよ」
ーーそれもそっか。
もしくは、まだグレイに利用価値があるということだろうか。ウォーム達の話がデマの可能性も考えたが、俺の行動が分かる人物は限られてるし、頭に留めておこう。
「ほんな、はよ話切り上げて行動に移すで」
(スフォームと連絡つかへんわ)
ーーえっ!
静かにしてたと思えば、都合が悪い事をテレパシーで発言したストームに驚きの反応を示しめた俺は、夢見た事を思い出して嫌な予感が走った。
魔法使用を控えてもらっているとは言え、此処は異世界。何が起こるか分からない以上、身を守るために使用するケースはいくらでもあるはずだ。
ーー何がなんでも施設に戻らないと……。
考え過ぎだと思いたいけど、マイナス思考が加速して急ぎムグルに連絡する。
「もしもし?」
{もしもし、フレム君? ちょうど良かった。今からそっちに行ってもいいかな?}
「え? ど、どうかしたんですか?」
相手の声色から焦りを感じた俺は、まさかと思って問い返した。ムグルには、スフォームやラーリングの事は伝え済みだけど……。
緊張の余り生唾を飲み込んだ俺は、ムグルの話を聞き逃すまいと身構える。
{急用が出来て、グレイ君を独りにする訳にはいかないからね。そっちは、早々と帰省する事になったのかな?}
「うん、急遽施設から呼び出しがかかって……。もしかしてWPと?」
{いや、違うよ。報告によると、初見のようだからね}
「初見?」
そこで頭を過った可能性は、自称悪魔と死神キアの存在だっだ。施設の存在を善く思わない派閥がいるけど、施設と犬猿の仲のWPに喧嘩を売る理由が無い。
{とりあえず、グレイ君の迎えに来てくれるかな? 待ってるよ}
「わ、わかった」
詳細を聞く余裕なんてなかったけど、急用が重なるなんてそうある事ではない。
一抹の不安を抱えながら電話を切ると、宿の正面玄関に移動して、待機していたウォームとルシウェルと共に車で宿を後にする。
「何か言われた?」
「いや、別に」
「顔色が悪いよ」
車内で俺を気にかけてくれるウォームに素っ気なく応えてしまったが、悪気は微塵もない。ただスフォームと連絡が付かない理由がラーリングにあって、ムグルの言う初見が死神のキアを指していたとしたら__。
「それよりスフォームとの連絡は?」
「ついたよ」
(体調が悪くなって、急遽フレムの部屋を借りることになったと連絡があった)
つまりスフォームは、すでにウォームが管理している施設にいるようだ。そこで、まさかと思った事を尋ねようとしたが__。
それではウォームの事情を知りながら傍にいることがバレてしまうと考え直し、空いた口を塞ぐように言葉を飲み込んでしまう。
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