第67話/独り立ちの第一歩

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「でなきゃ謝罪に来ないよ」  ーーそれもそっか。  もしくは、まだグレイに利用価値があるということだろうか。ウォーム達の話がデマの可能性も考えたが、俺の行動が分かる人物は限られてるし、頭に留めておこう。 「ほんな、はよ話切り上げて行動に移すで」 (スフォームと連絡つかへんわ)  ーーえっ!  静かにしてたと思えば、都合が悪い事をテレパシーで発言したストームに驚きの反応を示しめた俺は、夢見た事を思い出して嫌な予感が走った。  魔法使用を控えてもらっているとは言え、此処は異世界。何が起こるか分からない以上、身を守るために使用するケースはいくらでもあるはずだ。  ーー何がなんでも施設に戻らないと……。  考え過ぎだと思いたいけど、マイナス思考が加速して急ぎムグルに連絡する。 「もしもし?」 {もしもし、フレム君? ちょうど良かった。今からそっちに行ってもいいかな?} 「え? ど、どうかしたんですか?」  相手の声色から焦りを感じた俺は、まさかと思って問い返した。ムグルには、スフォームやラーリングの事は伝え済みだけど……。  緊張の余り生唾を飲み込んだ俺は、ムグルの話を聞き逃すまいと身構える。 {急用が出来て、グレイ君を独りにする訳にはいかないからね。そっちは、早々(はやばや)と帰省する事になったのかな?} 「うん、急遽施設から呼び出しがかかって……。もしかしてWP(ワッポ)と?」 {いや、違うよ。報告によると、初見(しょけん)のようだからね} 「初見?」  そこで頭を過った可能性は、自称悪魔と死神キアの存在だっだ。施設の存在を善く思わない派閥がいるけど、施設と犬猿の仲のWPに喧嘩を売る理由が無い。 {とりあえず、グレイ君の迎えに来てくれるかな? 待ってるよ} 「わ、わかった」  詳細を聞く余裕なんてなかったけど、急用が重なるなんてそうある事ではない。  一抹の不安を抱えながら電話を切ると、宿の正面玄関に移動して、待機していたウォームとルシウェルと共に車で宿を後にする。 「何か言われた?」 「いや、別に」 「顔色が悪いよ」  車内で俺を気にかけてくれるウォームに素っ気なく応えてしまったが、悪気は微塵もない。ただスフォームと連絡が付かない理由がラーリングにあって、ムグルの言う初見が死神のキアを指していたとしたら__。 「それよりスフォームとの連絡は?」 「ついたよ」 (体調が悪くなって、急遽フレムの部屋を借りることになったと連絡があった)  つまりスフォームは、すでにウォームが管理している施設にいるようだ。そこで、まさかと思った事を尋ねようとしたが__。  それではウォームの事情を知りながら傍にいることがバレてしまうと考え直し、空いた口を塞ぐように言葉を飲み込んでしまう。
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