第67話/独り立ちの第一歩

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 ーーもっと早く記憶が戻っていたらーー  今ならウォームやストームが、ラーリングの話題になると食い付きが良かった理由が何となく分かる。魔法使用を控えているにも関わらず、スフォームの体調が悪い状態が続いてるとしたら__。 「大丈夫」 (まだスフォームに意識がある内は、ラーリングの様子が分かるからね) 「……そうだね……」  何より感情的になったところで、俺には何の力もない。ただラーリングが弱っている原因に心当たりがあるだけだ。  到着したWPPOの住み処の前で深呼吸すると、焦る気持ちを押さえ込むんでインターフォンを鳴らす。 {はい。ちょっと待っててね、フレム君}  カメラに向かって俺が愛想良く手を振ると、暫くして旅行バック片手にムグルと玄関から出てきたグレイと再会を果たした。 「お世話になりました」 「フレム、大丈夫だった?」 「俺は平気だよ」  予定は狂ったけど、双方の関係は良好のまま済みそうだし、グレイとの約束を何とか守る事が出来て安堵した。 「とんだ災難だったね」 「ムグルはこれから?」 「まぁね。護衛の件は改めて連絡するよ」  詳細は明かさず話を流したムグルは、申し訳なさそうな表情を浮かべて誤魔化すと、後方から疑いの眼差しを感じた俺は、彼をフォローするように提案する。 「それじゃあウォーム経由で連絡下さい。これからウォームが管理する施設に帰るんで」 「それは長期滞在のつもりで?」 「どうだろう? ウェイクの施設のこともあるし、とある博士との合流の件もあるから、一概に言えないんだけど……。死にたくもなければ、殺されたくもないから。出来るだけ移動する時は、一報を入れるようにするよ」 (最悪の場合、鳳炎経由で)  自分が撒いた種は、ある程度自分で刈り取りたい気持ちはある一方で。命を狙われた経験から身を守る必要性を感じている俺は、都合が悪そうな事をテレパシーで追記した。 「そうしてくれると助かるよ。それじゃあグレイ君、施設に出向いた時は宜しくね」 「は、はい。お世話になりました」  別れ際に話しかけられたグレイは、ペコリと礼儀よく頭を下げると、ムグルはニコッと微笑んで俺達を見送ってくれた。 (急用とはいっても、それ程のことじゃないって事なのかな?) (さぁ、どうでしょうかね)  ムグルの表情は、はっきり言って読みづらい。鳳炎が分からないとなると、記憶が曖昧な俺では見分けが付かない程だ。  ひとまず何事もない事を祈りつつ、俺達は急ぎストームが待つ北の関所へと赴いた。 「待っとたで」 「1機でも飛べそうかい?」 「それがちぃと難しいとこや。サンダーが燃料となる雷岩石を手配してくれとったけど、今日中に届きそうにないんや」 「らいがんせき?」 「あの山積みにされてる物のことだよ」  ストームとウォームのやり取りの中で、知らぬ単語を耳にした俺がオウム返しすると、側に控えていたグレイが指差して話題に出ている代物を教えてくれた。
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