第67話/独り立ちの第一歩

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「石炭じゃないんだね」  見覚えのある石炭とよく似た姿形をしているが、全くの別物らしく。作業にあたっている者は、軍手ではなくゴム手袋などの絶縁対策を行っているようだ。 「フレムは初めて見るんか」 「うん」 「アレは、裏世界でよぉ取れる電池のような代物(しろもん)なんや。地上に落ちる雷で充電出来るもんやから、使い終わると裏世界に持ってて。ある程度放置しとったら、また使えるようになる再生可能エネルギーなんやで」 「へぇ、便利なものだね」  つまり輸送機などの燃料は、ガソリンのような液体タイプではなく。雷岩石が蓄電したエネルギーを燃料として活用出来る技術で動かしているようだ。 「もっと近くで見てもいい?」  ストームの話を聞いて、好奇心から確認をとると、「使用後の物ならえぇで」と許可をもらったところで社会見学開始。  どうせ直ぐには移動出来ないのだからと、荷物を輸送機の中に置いてきたきグレイと一緒に、使用済みの雷岩石を手押し車で次々と運び出しては、ダスト・シュートに捨てた先まで見に行ってみた。 「結構な量を積んでるんだね」 「だからスピードが出ないんだろうね」 「そうだね」  俺が見た感想を率直に口にすると、グレイが輸送機の致命的欠点を述べた。見た目は英里の世界にもあった形をしているが、エネルギーにしてる物が違うという事は、中の構造も随分違うんだろうし、アナトを避けた航路を選ぶ理由が分かったような気がする。 「て言うか。もしかして、サンダーの需要って__」 「充電や」  ーーやっぱりな。  雷のエネルギーを蓄積するのならば、雷の民であるサンダーの魔法は有効。むしろ彼のお陰で、わざわざ雷岩石を裏世界に戻す必要がなかったぐらいだろう。 「ストーム、嬉々として言わないの」 「せやけど、本人も自覚しとるみたいやで。カインドの事もあって、旧施設に足を運べへん事を気にしとったわ」 「旧施設?」  ウォームの指摘にストームが言葉を返すと、俺は再び聞きなれぬ名称に対し首を傾げて思い出す。  そう言えば、カインドがいた施設に魔石はなく。別の場所にあるとか言っていた。 「旧施設は、かつてサンダーが管理しとった。(いかづち)の魔石があった所や」 「成長が早すぎて改修工事が間に合わず、施設がまるごと魔石に飲み込まれたんだよ」 「へ~」  ーーと、此処で俺は更に思い出す。  もしバアルが存在するならば、嵐と慈雨の神様なのだから何ら不思議ではない。  英里の世界では、生け贄を捧げる宗教であった事から悪魔扱いを受け。ゲームなどの影響から様々な設定が付き、今や悪魔バールの方が有名だけど……。  ストームとウォームの説明を聞いて、内心(まさかな)とは思う。
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