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「グレイは行ったことある?」
「ないよ。サンダー様がいないと近付けない場所として、よく噂は耳にするけどね」
つまり行った事はなくても、ある程度のことは噂で知る事が出来る程の有名スポットのようだ。何となくWPがガミガミと五月蝿くなった原因が分かったような気がする。
「なんや、興味あるんか?」
「興味、て言うか。WPが施設を注視する理由がそこにあったりしないよね?」
実際は、施設の配置を問題視してるみたいだけど……。嫌な予感が過った俺が尋ねてみれば、軽い口調でストームが答える。
「とりあえず、環境破壊はしとらんで。落雷の確率爆上がりしとるけどな」
ーーうおい。
さすがに都合が悪いことだから、口に出しての突っ込みは控えるけど……。人はそれを悪影響と言うはずだ。
「てか、それでエネルギー供給不足なんだ」
「貴重な作業員を危険な目に合わせる訳にはいかへんからな」
ーーなるほどね。
恐らく魔石の育ち具合からして、元々落雷が多い土地柄で、人が住むような場所じゃないのだろう。案外周囲が問題視してないから、WPの知らない可能性がある。
(WPには黙っておくよ)
(おおきに♪)
「でも半日で終わる?」
社員を大事にしてる割には、見学する限り人手不足以前に効率が悪く。機内からスコップで雷岩石をすくい、目的地まで手押し車で運ぶ作業員が休む間もなく働いている。
それでも希望の時間に間に合わなければ?
ラーリングの容態が悪化すれば?
問われたストームも最悪な事態を想定してか、安易な返答しなかった。
「もしあれなら、俺が鳳炎に乗ってラーリングに……じゃない。スフォームの様子を見に行こうか?」
「出来るんか?」
「ウォームと同じ、炎属性の魔石は彼処しかないだろうし、魔力探知できるようになったから平気だと思う」
「そうやのうて」
「鳳炎の体調なら、マル秘特訓先で全快してきたから大丈夫だよ」
(それに私は渡り竜の一種ですから、長距離飛行は得意分野なんですよ)
「そ、そうなんか」
しかし、ストームの一存では決めきれないようで。黙って様子を伺い続ける俺の上司であるウォームに視線を送った事から、後一押しとばかりに言葉を添える。
「ウォーム。俺の実力が未熟なのは認めるけど、人命がかかっているんだ。俺の単独行動を許してくれないかな?」
今までずっと誰かの監視下にあった。
俺自身不安があったから、例え猜疑心からくる行為だとしても感謝しかないけど……。
ーーそれが仇となってはいけないーー
連れ拐われたカインドの事があって、ウォームも直ぐには頷いてくれなかったものの。不安を拭うように決断を下してくれる。
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