第67話/独り立ちの第一歩

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「グレイは行ったことある?」 「ないよ。サンダー様がいないと近付けない場所として、よく噂は耳にするけどね」  つまり行った事はなくても、ある程度のことは噂で知る事が出来る程の有名スポットのようだ。何となくWPがガミガミと五月蝿くなった原因が分かったような気がする。 「なんや、興味あるんか?」 「興味、て言うか。WPが施設を注視する理由がそこにあったりしないよね?」  実際は、施設の配置を問題視してるみたいだけど……。嫌な予感が過った俺が尋ねてみれば、軽い口調でストームが答える。 「とりあえず、環境破壊はしとらんで。落雷の確率爆上がりしとるけどな」  ーーうおい。  さすがに都合が悪いことだから、口に出しての突っ込みは控えるけど……。人はそれをと言うはずだ。 「てか、それでエネルギー供給不足なんだ」 「貴重な作業員を危険な目に合わせる訳にはいかへんからな」  ーーなるほどね。  恐らく魔石の育ち具合からして、元々落雷が多い土地柄で、人が住むような場所じゃないのだろう。案外周囲が問題視してないから、WPの知らない可能性がある。 (WP(ワッポ)には黙っておくよ) (おおきに♪) 「でも半日で終わる?」  社員を大事にしてる割には、見学する限り人手不足以前に効率が悪く。機内からスコップで雷岩石をすくい、目的地まで手押し車で運ぶ作業員が休む間もなく働いている。  それでも希望の時間に間に合わなければ?  ラーリングの容態が悪化すれば?  問われたストームも最悪な事態を想定してか、安易な返答しなかった。 「もしあれなら、俺が鳳炎に乗ってラーリングに……じゃない。スフォームの様子を見に行こうか?」 「出来るんか?」 「ウォームと同じ、炎属性の魔石は彼処(あそこ)しかないだろうし、魔力探知できるようになったから平気だと思う」 「そうやのうて」 「鳳炎の体調なら、マル秘特訓先で全快してきたから大丈夫だよ」 (それに私は渡り竜の一種ですから、長距離飛行は得意分野なんですよ) 「そ、そうなんか」  しかし、ストームの一存では決めきれないようで。黙って様子を伺い続ける俺の上司であるウォームに視線を送った事から、後一押しとばかりに言葉を添える。 「ウォーム。俺の実力が未熟なのは認めるけど、人命がかかっているんだ。俺の単独行動を許してくれないかな?」  今までずっと誰かの監視下にあった。  俺自身不安があったから、例え猜疑心(さいぎしん)からくる行為だとしても感謝しかないけど……。  ーーそれが仇となってはいけないーー  連れ(さら)われたカインドの事があって、ウォームも直ぐには頷いてくれなかったものの。不安を拭うように決断を下してくれる。
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