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「恐らく、それが最善策だろうね。一足先にウォーターが様子を見に行ってくれたけど、経験からして素直に診察を受けてくれるとは思えないし……」
「そうやな。うちの上司が、まともに健康診断受けとるイメージが出来んわ」
つまりスフォームが肉体の主導権を握るようになってからというもの、人間不信から診察を拒み続けているんだろう。
ーー最悪だーー
そもそも肉体を持たない魔族が、人間の健康意識を理解出来るとは思えない。
「フレム。悪いけど、聞き分けの悪い僕らの上司を説得してくれるかな? フェイバーには僕から連絡しとくよ」
「分かった」
「ほんなら身支度せんとアカンな」
「身支度?」
この時、飛行距離を考えてもいなかった俺は、素でストームの発言に対し首を傾げ。
「手ぶらでは行かせへんで!」
「輸送機で半日はかかるルートを飛んで行くんだよね?」
「もしもの備えは重要だよ。輸送機にある非常食セットと水筒は持って行かないとね」
危機感を覚えたストームが忠告し、グレイが心配そうに述べた後、ウォームが最低限必要な物を例に出してところで周囲が慌ただしく準備に取りかかる。
(鳳炎。もしかしなくても俺、凄いこと提案しちゃった?)
(そうですね。昔の御主人なら、どうって事のない飛距離なんですけども)
という事は、何かしらの裏技を昔の俺は習得していたのだろう。今更ながら鳳炎に相談もせず提案したので不安が過るものの、彼は決して無理とは言わなかった。
【独り立ちの第一歩/完】
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