第68話/初めての御使い

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(このまま真っ直ぐ行くの?) (はい。最短ルートで向かうつもりでいますが、何か気になる事でも?) (いや。バルトトスのような大型のアナトに遭遇するとか、最悪落雷に合ったらどうしようかと思って)  鳳炎に騎乗することは出来ても、空中戦闘は未知の世界と言うか。どうも風属性の魔法は、視覚ではなく体感を頼りにしなけれぱならない部分があるので。魔法は思い出しても上手く加減出来ずにいるのが現状だ。  故に咄嗟に浮遊する魔法を発動させたり、ストームのように長距離を飛行する事は出来ない事から。手綱を握ってはあるが、基本的に鳳炎に頼りっきりの状態だったりする。 (御不安でしたら、身体のサイズを大きくしますし、今からでも高度をあげますよ?) (空気薄くなるよね?)  すると、俺の質問に鳳炎が遠い美空を眺めながら答える。 (ストームさんの話によると、酸素濃度は然程(さほど)変わらないそうです) (そうなんだ。さすが異世界だね)  常識に囚われてはいけない、とは思っているけれど……。なかなか染み付いた知識を(くつがえ)す事が出来ないのが現状である。  俺は、モールの目と言われる三日月のような何かを暫し見上げた後、体力配分を考えるために鳳炎に所要時間を尋ねる。 (因みに、輸送機で半日かかる飛行距離を鳳炎は何時間で飛行する予定でいるの?) (そうですね。今の御主人が、三時間ぶっ通しで魔法を使うとは思えませんので。休憩を挟んで六時間程でしょうか)  何かさらりと鬼畜発言をされたけど、俺がその気になれば三時間程の移動距離らしい。 (休憩は三時間に1回?) (それでも構いませんが、慣れない飛行に腰が痛くなりますよ。車とは違いますから) (じゃあ休憩タイミングは鳳炎に任せるよ) (高度はいかがされますか?) (このままで。サイズは、もう少し大きい方が羽ばたく回数が減ったりする?)  穏やか過ぎる風の影響もあるかもしれないが、健康体になったからと言って無理はさせたくない。鳥とは訳が違うのだろうが、俺が言わんとする意図を汲んでくれた鳳炎は、同調するように(そうですね)と肯定してから意見を述べる。 (ですが、余り大きくなりすぎると小回りが利かなくなるので、大型車程のサイズにいたしましょうか) (そうだね)  俺は、少しでも鳳炎の負担が少なくなればと思っての提案だったけど……。鳳炎が一回り大きくなったところで、跨いでいた首回りが太くなり、足に力を入れなくても身体が安定したとこれで気が付く。どうやら気遣いに関しては、鳳炎の方が一枚上手のようだ。
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