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「さて。それでは、一息吐いてから出発いたしましょうか。御主人」
「そうだね」
報告が一段落したところで人型の鳳炎が提案すると、Liderの通信担当の一人が「でしたらアチラを使って下さい」と限られた場所を仕切った休暇スペースを案内してくれた。
何でもバルトトスの一件で半壊したストームの自室を含め、テロリストに破壊された修繕が間に合っておらず、安全地帯が限られてる状態なんだそうだ。
「それでスフォームは魔法を使ったのかな?」
「その可能性は高いですね」
バルトトスと比べたら可愛いもんだが、襲われたら労災になるんだろうし、被害者が出れば報道されることだろう。
「偏見って凄いな」
それだけではない気もするけど、Liderの前で迂闊な事は言えない。いそいそと持ってきた荷物をテーブルに広げると、乾パンや缶詰めなどの非常食が大半で__。
「甘いものでも入れてくればよかった」
非常食を食べる程、お腹がすいてなかった俺は悩ましげに呟いた。ーー文句ではない。
そもそも甘味は高価な代物のようだし、急な事で頭が回らなかった自分も悪いと思う。
すると、先程案内してくれた人とは別のLider関係者が声をかけてくる。
「おひとつ食べますか?」
差し出された缶の容器に描かれたパッケージを見る限り、飴玉のようだが__。
「あ、有難うございます」
咄嗟に両手を器変りにすると、相手は缶を軽く振って3つ。更に振って2つ追加してくれたが、想像より歪な形で凝視する。
「飴ですか?」
「ううん。蜜蝋石といって、蜜を体内で精製する虫から採れるモノだよ」
鳳炎が確認のため質問すると、相手は俺達が異世界から来た者と知ってか。軽く説明した後、缶から取り出した蜜蝋石を口に放り込んで食べてみせた。
「御主人。お一つ頂いても?」
「構わないよ」
(まだ食べないで下さいね)
蜜蝋石を摘まむやテレパシーで引き留められ俺は、鳳炎が匂いをかいだ後、食べてた感想を述べるまで待った。
毒ってことはないだろうけど、自分好みの味でないなら一気に食べた方が良い。
「あ、キャラメルによく似た飴ですね。砕ける前に溶けて柔らかくなりました」
そこで俺は、試しに1つ口に放り込み。
蜂蜜をちょっと薄めた味を堪能した後、軽く噛んだところで某CMが脳内に流れた。
ーーミ〇キーとよく似ている。
「あの、お口に合いませんでした?」
「いえ、何だか懐かしい気持ちになりました。有難うございます」
「失礼ですが、お名前を伺っても?」
「リベルタです」
中性的な顔立ちで、たぼっとした作業着から判別が難しいけど……。恐らく女性の方だろう。この後、別の部署から連絡が入ったことで仕事に戻ったが素直に嬉しかった。
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