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第69話/もどかしい瞬間
あれから数十分後__。
ウォームの施設に近付くにつれ、雲が晴れるどころか厚みを増し、ちらほらと飛行タイプの生物を目撃するようになった頃。
(このまま順調に行けば良いのですが……)
わざとらしくテレパシーでフラグを立てた鳳炎の発言から、嫌な予感を肌で感じた俺は身構えた。
ーー何か、来るーー
視覚で捉えた訳ではないので、回避のしようがないけど……。鳳炎が自主的に右へ寄りに進路をとった時だった。
雷雲を荒々しい海面に見立てたかのように、天空を泳ぐ巨大な魚影の半身が姿を現し、複数のギョロリとした大きな目が平行して飛行する俺を凝視する。
(出ましたね、ガルバ)
(がるぱ?)
(ストームさんの話によると、空の運航でもっとも恐れられてる存在だそうです。食事時に遭遇しなくて良かったですね)
恐怖から一瞬吸った息を止めた俺に、鳳炎は翼を動かしながら冷静にテレパシーで答えると、全体像が分かるように上昇。
厚い雷雲の影響で魚影のようにしか見えないが、ワニとナマズを足して2で割ったような造形で体長60メートルぐらいだろうか?
3車両はある巨体をどういう原理で空を浮いているのか分からないけど、脅威的な光景がそこにあった。
(最古のアナトと言われるだけあって、貫禄がありますね)
(最古の?)
(聞いた話によると、モールの目と恐れられてる三日月はガルパの食べ残しで。昔は、光を放つ円球だったと言われてるそうです。恐らく表世界にある太陽のようなモノと同じものが、裏世界にもあったのかもしれません)
(そんな話、何時聞いたの? )
(御主人が輸送機で爆睡してる時です)
つまり、俺が輸送機での移動中。
体力温存という名義で仮眠をとってる間、鳳炎はテレパシーでストームやウォームと雑談を楽しみながら暇潰ししていたようだ。
(退治しないのは、異世界に何かの影響を与えないため?)
(そのようです。襲われたら別でしょうが)
ーーなるほど。
見るからに害がありそえな風貌をしているが、弱肉強食の頂点に君臨してる場合。危険だからと廃除して、自然界のバランスを崩した話は英里だった世界でもあった。
でも視力が良くなった所為で、優雅に雷雲を泳ぐガルバの歯と歯の間に見覚えのある青っぽい制服が挟まっているのですが__。
(仇討も無しなんだ)
(対応はその時々かと)
(上司によるってこと?)
(それもありますが、油断して餌食になるケースが殆どだそうです)
ーー油断て……。
要するに弱肉強食の世界として、やむを得ない的な諦めムードが感じられる。
この間、ガルパは雷雲の中へと沈み__。
俺達は相手の気が変わる前にと、風魔法で飛行速度を向上すると、その場を後にした。
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