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「それと、睡眠は7時間とってる? 1日が24時間として、1度は7時間ぶっとおしで寝る習慣つけないと身体壊すよ」
「壊す?」
「人間は睡眠不足になると、体調を崩し易いんだよ。目眩や吐き気を感じたら無理をせず身体を休めないと、最悪死に至る事もあるんだからね」
その名も〈過労死〉というヤツだが、話を聞いたスフォームの顔色からして、ラーリングに教えてもらってないのだろう。
具体例を出したことで、心当たりがあったスフォームは深く反省しているようだ。
頭を抱えて、暗い影を落としている。
「ラーリングは浮上出来そう?」
「いや、暫くは無理だろう」
「じゃあ消化に良いもの頼んで来るから、スフォームが食べてよ。とにかく栄養をつけてもらわないと、身がもたないと思うから」
「分かった」
「ついでに二三日仕事を休んでもらえないかな? それで回復出来ないようだったら、さすがに医者に診てもらう事になるよ」
本当は今日から医者の世話になるのが正解だと思うが、此処は異世界。点滴しようにも必要機材があるとは考え難い。
けど素直に肯定しないスフォームの様子からして、気が乗らないのだろう。過去の出来事を思えば無理もないけど、これからの事を考えて彼に伝える。
「言っとくけど、俺はラーリングもスフォームも生きててほしいから提案するんだよ?」
記憶障害があるから、我ながら説得力に欠けとは思うけど……。俺の差し伸べた手に預けてくれた手を握ると、スフォームはその手を見つめて優しい口調で言う。
「そんな事を言うのは、お前とラーリングぐらいだ」
「そう? まぁ人間の身体について知らないスフォームのように、魔族の本質を知らないだけかもしれないけど……。スフォームとは仲良くやっていきたいから、出来る限りの事はしたいと思うよ」
「__そうか」
気休めレベルの言葉しか思い付かなかったけど、穏やかな表現を浮かべるスフォームを見て少し安心した。今の彼は、気持ちに余裕がないだけで悪い奴ではない。まずは栄養を与えて、しっかり休んでもらわないと!
「手始めに、俺が食事の手配をしてくるから。スフォームは、今日から休めるように手を回しといてよ」
「今日から?」
「当たり前だろ。大体スフォームに忠告しといて、ラーリングに何も言わないとか。特別仕様するつもりないから」
すると俺の提案に怪訝な顔を見せたスフォームが、今度は眉を潜めて不安そうに声量を落として俺に尋ねる。
「ラーリングも叱るつもりでいるのか?」
「というか、どんだけ心配してるのか。人伝に言ってもらっても効果ないだろ? ましてやラーリングに甘々のスフォームに言ってもらっても、いつもの事だからって軽視するだろうしさ」
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