第69話/もどかしい瞬間

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「__言えてるな」  それこそ昔から、ラーリングに何か起こる前に危険を予知して口を挟むスフォーム。  お陰で今日(こんにち)まで生き残ってこられたと思うが、行動を制限されればストレスは溜まるもの。今回の気まずい関係も、些細な意見の食い違いのような気がするし……。  とりあえずスフォームの意識がある内に、栄養があるものを摂取してもらうため。急ぎウォーターを見つけ出して食事の手配をすると、休む間もなく食事を終えたスフォームに見張りを言い付けられた俺は、ラーリングが起きるまで改装したての部屋に軟禁状態となってしまった。  まぁ気持ちが弱ってるスフォームの心理状態を察して、お断りしなかったけど……。  相変わらずウォーターの出入りは禁止されているので、テレパシーがおぼつかない俺をフォローするために鳳炎がトランシーバー代わりと成り果ててしまう。 (御主人、ウォームさん達の到着は明日の晩になりそうです。それとサンダーさんから、協力してくれる博士の待遇をどうするのか考えてほしいとの連絡が入りました) (え、今それどころじゃないんだけどなぁ)  そうは言っても提案してもらって数日経ってることから、遠回しにやる気あんのか? とLiderに疑われ始めてるのかもしれない。  ーーだとしたらマズイな。  これ以上の延期は、Liderとの信頼を失い兼ねないし、だからといってラーリングの約束を無下に扱うつもりは無い。  考えた末、時間稼ぎとして閃いた事をダメ元で提案してみることにする。 (実証実験事態は簡単なものだから、Liderの方でやってもらえないもんかな? 都合を合わせるのが難しいなら尚更、やり方を教えるから、その結果を教えてもらえると有難いんだけど) (それもそうですね。サンダーさんに連絡して、確認をとってもらいます) (それとWPPOから連絡が入ったら、迎えが必要が聞いてほしいんだけど……。WPに関しては、変わらずウォーム担当? それとも輸送が携わるからストームになるのかな?) (それもサンダーさんに確認してみるしかありませんね。どうやらスフォームさんがお休みの間、司令塔の役割を果たしてるようですから)  ーーあれ?  彼は確か、ウォームやストームより年下だと聞いたような気がするけど……。もしや彼が一番仕事が出来る部下なんだろうか?  考えてみれば、ウォームは俺に甘いところがあるし、ストームは思い付きで行動するから周囲に迷惑をかけてしまいがちだ。  それにウォーターは、ウォームが到着するまで此処から離れられないだろうし、ウェイクとセイクは落ち着いた話を聞かないから論外としたんだろう。 (という事は、サンダーはカインドの事を棚に上げて仕事してるの?) (それがLiderの協力を得て、捜索隊を結成すること事態難しいそうです。またWPとの折り合いも悪いことから期待してないと) (そんな!)  こんな事なら力ずくでもカインドを救えばと後悔したが、当時の自分の実力では足手まといなだけだ。    ーーもっと強くならないとーー  しかし、鳳炎の話しには続きがあった。  深刻な顔で思い悩む俺に、冷静な口調でテレパシーを送ってくる。 (ただサンダーさんの話によると、居場所が分からないだけで生きてるそうです。気が熟すまで待つしかないかと……) (歯痒いな)  今のところ相手の目的どころか。素性すら分からないので手の出しようがない。  おまけに手が空いてる人材がいない状態で、俺の自身弱ったラーリングを残して大胆な行動を起こす気にはなれなかった。
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