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「ウォームとストームも、その宿に泊まる予定でなんですか?」
「確認を取ります」
「今暫く御待ちください」
俺の質問に即刻で短髪の少年が答えると、黙祷を捧げ始めたので、代わりに少女が丁寧に案内を申し上げ__。
「確認が取れました。教皇様が御二人も宿に招待するとのことです。ご安心下さい」
一旦外に出て、誰かに確認をとるのかな? と思いきや。少年独自の連絡手段で、教皇に直接お問い合わせしたようだ。
これにはムグルも驚いたようで、俺のアイコンタクトに気付かない様子から直接御遣いである二人に尋ねてみる。
「あの……。この世界にテレパシーって、存在するんですか?」
「いえ、御遣いだけの特権です」
「驚きました?」
「驚きました。そう言えば、ムグルの同行も許可してもらいたいんですけど」
「その事でしたら、既に許可を得ています」
「ご安心下さい」
「有難うございます」
俺の率直な質問には少年が答え、続いてのお願いには少女が先に応じてくれたので、会話は交互に成立した形で終了。
特に隠している様子はなかったが、ムグルがテレパシーで(よく質問出来たね)と俺に言ってきたところからして、WPの間では普通の流れではないらしい。
(分からない事はその場で聞いて、余計な詮索をしなければ大体答えてくれるよ?)
(余計っていうのは?)
(どうして御遣いだけが使えるのか)
するとムグルは、納得した様子で(あ~、なるほどね)と相槌を打ちながら靴を履き。俺が靴を履いてる内に玄関を開けて、御遣い様の二人に「それでは案内を宜しくお願い致します」と伝えて先導を譲ると、靴を履き終えた俺を一瞥した二人の御遣いは、門構の前に横付けされた白い霊柩車__いや、失礼。
やたらゴージャスな白い車の後部座席へと案内され、一瞬躊躇いが生じる。
(豪華過ぎやしませんか?)
デザインが霊柩車にしか見えないのは、恐らく日本文化を知る俺ぐらいだから伏せておくとして……。やたら目立つ装飾に気が引ける思いで乗車すると、俺のテレパシーを受けたムグルは(さすが国賓のおもてなしは違うね)とテレパシーで応えながら後に続いた。
(宿って、何処にあるんだろう?)
(国土はそう広くないはずだよ。蓮くんがバックヤードを入れて、広島ぐらいと言ってたかな)
(へぇ~)
(ただ中央はあってないようなものだから、人が豊かに暮らしてる範囲は、かなり狭いと思うけどね)
(ん? あってないようなもの?)
(どうも菱型のドーナツ状に穴が掘られてるようで。その中央部分は、神聖な場所として一般の立ち入りを禁止されているんだよ)
(へー。そう言えば、ウォーターの施設の近くにもあったな)
神様に見離れたと聞く割りには、矛盾しているような気もするけど……。英里として過ごしてた世界も、目に見えた神様がいる訳ではなかったので。そう言う神秘的な場所はあるんだ、ぐらいにしか思わなかった。
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