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第70話/意図せぬ矢合わせ
ーーさて課題が増えたなーー
渡り通路から本塔に移動した俺は、今の内とばかりに溜め息を吐くと、曖昧な記憶を頼りにウォームの私室がある下の階を目指して歩き始め。社員食堂の前に差し掛かったを処で、探していたウォームに呼び止められる。
(フレム!)
けどテレパシーで呼ばれたので検討違いの場所をキョロキョロ。すると今度は、元気な声で「こっちや!」とストームに呼ばれ。手まで振ってくれた事で、中央園の一角で待機してる二人の姿を見つけた。
「休憩ですか?」
「嫌味かいな」
「スフォーム様の容態は?」
(ラーリングは無事?)
(無事だよ)
「容態も回復に向かってるけど、福利厚生を見直してほしいな」
(過労死一歩手前だったよ)
報告はテレパシーで既に鳳炎から受けてるはずだけど……。ウォームの質問にテレパシーを交えて答えると、安堵の表情を浮かべながらも要因に心当たりがあるようで、二人揃って暗い影を落とした。
「身体が動くからって、最低限の栄養も採らずに不眠不休で働いてたらどうなるか。人間代表として教えといたけどね」
「恩に着るわ」
「昔から僕等を疑って掛かる人だから」
「それはウォーム達も同じじゃないの?」
(魔族だからって、俺と合わせるのも渋ってたよね?)
「それは……」
「フレムは魔族が怖ないんか?」
「相手によるかな」
今は利害一致してるしら親バカならぬラーリング馬鹿としか見てない事もあって、怖いと思うより心配なぐらいだし……。
質問してきたストームには悪いが、髪型的に暴走族を連想してしまう事もあって、魔族であるスフォームより方言が荒くなったストームの方が怖いと思う時があるぐらいだ。
「それより今後の予定は?」
(悠長に構えてられる余裕出来たの?)
むしろ忙しそうなイメージを抱いて日々過ごしていた俺は、ストームに「まぁ座れや」と促され。着席したところで、左手に座るウォームから不穏な言葉を貰う。
「ちょっと面倒な事になってね」
「えっ?」
「上空に救世主が居ついてもうたんや」
「メシア?」
救世主とは名ばかりの存在なのか。
嫌な顔して問い返したた俺に、ストームが顔色を悪くして教えてくれる。
「此処に来る途中、ガルバに出くわしたやろ? アレの親玉みたいなもんや。いつも見回りがてら、雷雲がたまらんよぉ定期的に風をおこしとったんやけどな」
「暫く立て込んでたからね」
つまりストームがあっちこっち施設に足を運ぶのは、雷雲を隠れ家とするガルバや救世主対策をだったのだろう。今はスフォーム及びラーリングの体調不良で、無闇に魔法が使えないばかりか。退治すら難しい状況で困ってるようだ。
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