第70話/意図せぬ矢合わせ

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「我が呼び声を聴け 双璧(そうへき)牙爪(そうが)よ  盟約に従い 我が呼び声に応えよ」  すると描かれた魔法陣からハスキー犬サイズの龍碑と竜祈が現れ、ご機嫌な様子で尻尾を振ってくれる。 「凄い! 精霊獣が短い詠唱でも応えてくれるなんて、初めてみました」 「そうなんだ」  記憶が欠如(けつじょ)してる事から、何を基準にして凄いのか分からないけど、相手の反応からして、本来長い詠唱を求められる上位種を簡単に喚びつけてしまったようだ。 「御主人さえよろしければ、その場に応じて彼等に護衛を任せてみてはいかがですか?」 「そうだね。裏世界なら大目に見てくれそうだし、何かあっても鳳炎と連絡がとれるんなら安心して仕事に集中出来るからいいんだけど……。今日は龍碑と竜祈を連れてくよ」  言っとくが、直感なんてもんじゃない。  精神的にまだ不安定なラーリングが危機的状況に陥った時、独断で身を守る行動が出来るのか不安に思ったからだ。 (鳳炎、もしスフォームが表に出そうだったら止めてね) (畏まりました)  ラーリングの過去は知らなくても、現在の容態は知っている鳳炎。俺の要求をテレパシーで知ることで、不安要素を察すると引き続き留守を預かってくれた。  一方本棟へと続く渡り通路を龍碑と竜祈を連れて抜けた俺は、早速出入口で待機していたストームに声をかけられる。 「なんや、早かったやないか」 「鳳炎にラーリングの事を任せる代わりに、龍碑と竜祈に守ってもらうことで納得してもらったよ。そっちは?」 「順調やで。WPには近づかんよう書面で注意勧告しといたし、ウォームが今避難誘導しとるとこや。まぁ持ち場から離れん奴もおるけど、フレムが気にすることはあらへんって Liderの代表も言うとったで」 「レディウスさんが?」  それなら多少の事は目を瞑ってくれそうだけど、何かありそうな気がしてならないのはグレイの事があるからだろう。疑いの眼差しで問い返すと、ストームは腰に手を当てて自分のことのように自慢気に答える。 「フレムがやることなら協力する言うて、えらい張りきっとたで。先日の挽回を計りたいんやろ」 「俺、グレイの件は蚊帳の外のはずだけど?」 「せやけど、友達の事で腹を立てとったろ? 日頃フレムから情報提供してもらっとるLiderとって、フレムに疑われることは致命的な事なんや」  それは解釈の仕方によっては、俺に依存し過ぎてるような気もするけど……。敵味方分からない時期に比べたら有難い事だ。
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