第70話/意図せぬ矢合わせ

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「首尾は良いか?!」 「割れ物への対策は?!」 「人呼んで来い! 間に合わないぞ!!」  ーーなんか、すみません……。  軽い気持ちで来るべきではなかった。  周知は出来ても、対策を終えてるはずもなく。バタバタと動き回るLider関係者を尻目に屋上へと足を運ぶ。 (フレム。周囲を気にし過ぎて、判断力を損なわないようにね) (ん?) (準備しとるから言うて、相手に先手を取らせてもうたら元も子もあらへん言う事や)  つまり周囲の事は気にせず、必要に応じて対応して構わないというのだろう。屋上に出てきたのに、空模様ではなく周囲の空気を読もうとしていた俺に、ウォームとストームがテレパシーで助言。お陰で俺の役目が、最優先事項であることを認識して(そら)(あお)ぐ。     ーー酷い空模様だーー  厚くうねる暗雲は、遠い山の天辺を覆い隠すように垂れ下がり始め。裏世界で生活することから夜目が利くようになったとは言え、何時にも増して暗闇が影を落とす。   ーー然程(さほど)風は吹いてないのかーー  英里の世界であれば、超大型台風(スーパーセル)とか言われる程の積乱雲が発達しているのに__。  まぁ異世界だから、俺の常識なんて通用しなくて当然と思う反面。普段の雲行きとは違和感を覚え、視線を山の方にまで向けて観察する。  ーーどうにも腑に落ちないなーー  そもそも本当になんだろうか?  雲であったとしても、俺が知ってる原理で精製されたモノではなさそうだけど……。 「龍碑、竜祈。施設を中心に風を集めてくれないかな?」  すると手短に吠えて返事した龍碑と竜祈は、交互に遠吠えを始め。少しずつ風が強くなってくるが、施設の真上にあった雲が薄くなったぐらいで絶大な効果は感じられない。 「どうするんや? フレム」 「悠長な事を言ってる暇はなさそうだね」 「うん。龍碑と竜祈に防壁(シールド)を張ってもらうつもりだけど、ウォームは中に入った方がいいと思う」  というのも、今の状況下で一番風に煽られているのはウォームだ。心配してくれるのは有難いが、風属性に縁のないウォームでは俺の魔法に巻き込まれてしまう可能性が高く。  ラーリングの都合上、魔法使用を制限されてるストームに頼るのは酷と言うものだ。 「魔法の事をよく知らない人が、パニック起こして怪我されても困るし、ウォーター独りで慣れない施設を統括するのは無理があると思うよ」  姿を確認してはいないけど、救世主(メシア)の所為で足止めをくらっているのなら、ウォーターもまだ此の施設に残ってるはずだ。
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