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「気付いとったんか」
「会ってはいないけど、三日前から救世主がいるってことは、足止めをくらってるんじゃないかと思って」
「その通りだよ。僕が施設内の統括に専念出来るのは、ウォーターのお陰なんだ」
「それなら尚のこと、此処は風のスペシャリストに任せて。ウォームはLiderのフォローに回って。俺が何とかしてみせるから」
自信はなくても、このままじゃいけないことぐらい分かってる俺は、自分に言い聞かせるように拳を固めて言うと、ウォームは間を置いて「分かった」と応じてからストームに念を押す。
「フレムの事、よろしく頼むよ」
「心配あらへん。ワイの他に守護獣もおるんや。そっちこそ、余計な怪我人出して夢見の悪いことにさせんなや」
「分かってるよ」
そして俺は、軽く手を振って隙間から様子を伺っていたLiderを引っ込めたウォームを見送ると、抑えていた魔力を放出して強風から暴風へと変化させる。
「やる気十分やな」
「もしぶっ倒れたら、後始末よろしく」
すると苦笑いを浮かべたストームは、許容範囲とばかりに親指を立てた。無論出来ることなら周囲に迷惑をかけたくないのだけど、雲行きの怪しさから手加減なんてしていられない。続いて、尻尾を振ってご機嫌な様子の守護獣に指示を出す。
「龍碑と竜祈は、俺の魔法で施設が壊れないよう防壁を展開。もし反撃があっても、攻撃を防ぐだけにしといてね」
その後の事は、臨機応変という事で難しく考えるのを止めた。魔法の威力は予定外でも、今回の目的は相手を倒す事ではないのだから__。
「異界に根付きし 紅炎の結晶よ
蓄積されし 聖なる力を我が前に示せ」
まずは詠唱にて、魔石からウォームの魔力によって蓄積された聖なる力を抽出。所謂光の加護だ。純血ではないウォームだからこその特性のため、抽出された聖なる力は<火の粉>に近い姿で俺の前に出現。
ーーちょっと心もとないけど、
相手を驚かすには十分かーー
キラキラと揺らめく火の粉を両手に引き寄せ、更に風魔法を上乗せするべく。俺は左グローブに付ている宝玉から剣を出現させながらイメージを膨らませる。
「我が手に求めるわ 暗雲を祓いし神風
聖なる力と交わりて 天空を貫き
我が頭上に広がる黒雲を一掃せよ」
幸いにも、俺が扱う魔法の詠唱は一種の手紙のようなものだ。長文であれば成功確率が上がるという訳ではなく。力を貸してくれる相手にイメージが伝われば、それなりの形になってくれるから有難い。
ただ問題は、それを具現化する対価として必要な魔力量を保有しているか否かで__。
柄を握り締め、風を纏った剣を振り上げた俺は、力強く発動させたい魔法を口にする。
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