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「昇竜爆風波!!」
果たして日本語で発動するのか?
そんな一抹の不安を他所に、生み出された高エネルギーが剣を伝って天空に一筋の光を放ち。光の道筋が細く消えた瞬間、眩い光と共に爆風と言う名の衝撃波によって、暗雲を一瞬にして吹き飛ばしてしまった。
その様は天へと昇った巨大な白龍が、冥土の土産とばかりに強烈な吐息を吐いたようである。
ーー成功した?ーー
疑問形なのは、必要な雲まで吹っ飛ばしてしまったようで。満天の星空が上空に広がって、視線の先に救世主の姿がなかったからだ。
けど安堵もつかの間、空にいるはずのない鯨の鳴声が轟き。何事かと視野を広げると、ガルパを数十匹丸のみにしそたいな鯨とオニオコゼを足して二で割ったような巨大な生物が上空を泳いでた。
「あれが、救世主?」
どんな原理で浮力を産み出しているのか謎だけど、赤黒い図体に刺々しい見た目からして救世主というより悪の権化である。
「あの衝撃波に耐えたんか」
そう言えば、結構な威力をぶっぱなしたのにダメージを受けた様子は無い。まぁ殺傷力はない魔法だから、ある意味成功ではあるけども……。
救世主は突如塩の代わりに白く光る何かを吹くと、ゆっくりと方向転換して施設から離れていった。
「……作戦、成功したみいやな……」
どうなることかと思ったが、間合いをとって攻撃を仕掛けてくる素振りなど見せることなく。指先で大きさが図れる程離れていった救世主を見送ったストームは、肩の荷を下ろして言った。
一方脱力した俺は、気絶はしなかったものの。魔法で使用した剣を納め、そのままヘタリ込むように腰を落とす。
ーー終わったーー
戦闘を覚悟してただけに拍子抜けしたけど、理想通りの結末には感謝する。
「よぉやったな、フレム」
「龍碑と竜祈のお陰だよ」
魔法を発動させたのは確かに俺だが、何気にぶっ倒れずに済んだのは、指示通り施設全体に防壁を展開しながら、風を呼び集めてくれた守護獣のお陰である。
俺は改めて清んだ夜空を見上げ、達成感から顔がほころぶけど……。良かれと思ったその行為が、鏑矢の役目を果たす事になろうとは__。当時の俺は思いもしなかった。
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