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第71話/月の出
一方、救世主が引き返してくるんじゃないかと思い。暫く空の様子を窺っていたものの、風を読んで危険はないと判断したストームは、へたりこんだまま夜空を見上げている俺に手を差しのべて問う。
「立てそうかいな」
「うん」
俺は愛剣を宝珠に納めると、その手を取って何とか立ち上がった。戦闘らしい戦闘はしていないが、まるでフルマラソンに参加したような疲労を感じる。
「さすがに休憩せぇや」
「だけど報告とかあるんだよね?」
「そんなもん、現場監督しとるワイ等に丸投げすれば済むことや。ゆっくり出来るのも今の内やで」
つまり救世主の問題が解決したことで、滞っていた物事が動き出すんだろう。
そう言えば、死石の実証実験を頼んで二日が経過しているし、エレクに任せた結果も聞きに行かなきゃならないだろう。それにウェイクの魔石浄化の事もあるから、ラーリングとゆっくり話すなら今しかない。
「二人とも無事かい?」
この間に、ストームが屋上の出入口を開けると、その近くで待機していたウォームが心配して駆け寄って来た。
「見ての通りや。さすがにフレムは、休ませた方がえぇで」
「じゃあフレムの読み通りだった訳だ」
「まぁ結果だけ見ればそうやな」
と、此処で解散命令が出てないことから、疲れていても黙って突っ立てる俺に気付いたストームは、軽い口調で促してくれる。
「あ、フレムは休憩に入ってえぇで」
「後の事はストームに聞くよ、お疲れ様」
「ありがとう。御先失礼します」
しかし、こっそり俺の後を付いて来たLider関係者が、上司の目から離れた隙を狙って話しかけてくる。
「あの、すみません」
「はい?」
「少々お話を伺ってもよいでしょうか?」
控えめに話しかけて来たその人は、胸当てなどの装備からして、警備や護衛に携わる仕事をしているのだろう。服装の雰囲気からレディウスの差金とも考えた俺は、下手に断れないとばかりに「立ち話レベルなら」と愛想よく対応した。
「有難うございます。私、初動隊に属しています。オリバーと申します」
「初動隊?」
「事件や事故が発生すると、真っ先に現場へ向かう先発隊のことです」
要するに、機動隊のような役割を果たしているのだろうか。一応事前に話を通してるはずだから、事故や事故扱いさるのは筋違いのような気もするけど……。
「何用でしょうか?」
「実は、どのような魔法を使用されたのか。差し支えなければ教えてほしいのです」
それを聞いて、現場監督として立ち合ってくれたストームの発言が過るものの。今回の魔法は、独自に考えた要素が含まれているため説明は難しいだろう。
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