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「何て説明すれば良いかな~? この世界に噴水ってある? 水をぶわっと吹き上げる」
「あるある」
「それが救世主の背中に付いてるような感じかな。姿に似合わず、白くて綺麗だったよ」
けど黙ってやり取りを聞いていたラーリングが、途端に「え?」と驚きの反応を示して俺に確認する。
「黒じゃなかったんですか?」
「うん、白だったよ。ラーリングは、救世主を見たことがあるの?」
「ウェイクの施設で、一度だけ」
「凄い! 地元の僕でも見たことないのに」
「そんなに珍しい事なんですか?」
目撃情報からして、この世界に長居してるウォームやストームがまともに見たことがないのだから珍しい事なんだろうけど……。
その場にいなかった鳳炎がグレイに尋ねると、地元ならではの情報を教えてくれる。
「昔は裏世界も雲が少なかった事もあって、祖父母の世代はよく見かけたらしいですけどね。今は厚い雲に覆われてることが多いから、レディウス様の世代でも救世主の全身を見たことがある人は少ないと思いますよ」
「では、随分昔から居る生物なんですね」
「えぇ。アナトやアスタルトとは違うらしいんですが、まぁだからと言って害のない生物かと問われると意見が別れるところですね」
「意見が分かれる?」
__と、これはラーリングだ。
俺は黙って聞いてるだけだが、グレイは分け隔てなく質問に答えてくれる。
「なんでも悪食体質で。一口で街が消えたと恐怖を語る人もいれば、逆にそのお陰で助かったと拝む人がいるぐらいだからね」
「それでグレイは俺を心配してくれたのか」
「そうだよ。二人の話によると、鳳炎さんの代わりに強い味方を引き連れて行ったそうだけど……。アナト、じゃないよね? 白い毛むくじゃらだし……」
「うん、俺の守護獣である龍碑と竜祈だよ。右の毛が短いのが龍碑で、左のモフモフっとしてるのが竜祈」
実はワンとも鳴かないだけで、ずっと俺の後を付いて来た龍碑と竜祈は、部屋の出入口を守るように鎮座中。指示しなくても、きっちり仕事をこなしてくれている。
「触らしてくれるかな?」
「怖くないの?」
確か犬のような毛むくじゃらは、アナトを連想させるから苦手な人が多いような話を聞いたけど……。グレイは、「怖くはないよ」と答えてから理由を述べる。
「フレムが連れてる子に、悪い子はいなさそうだから」
「安易だな~」
でもあからさまに嫌う素振りを見せられるよりマシか、と考え直した俺は、2頭の尻尾を確認してからグレイにアドバイスを送る。
「尻尾を振ってる間は平気だと思うよ。ただ興奮し過ぎて歯が当たるかもしれないから、気をつけてね」
特に興奮し易い龍碑は、構ってくれる人にじゃれつく癖があるから心配したけど……。
慎重に距離をつめて撫でようとするグレイに、一旦距離を置いて、鼻先でグレイが差し伸べた手を嗅いでから触らせていた。
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