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「さすがに無理があったでしょうか?」
「いや。むしろ病み上がりなのに、ぼく健康です! とか言わないよね?」
「ですよね」
スフォームと同じように無自覚だったり、大丈夫精神だったら叱ってやろうかと思ったけど……。苦笑いで同意した様子からして、ひとます自覚してくれたと判断する。
「こっちに来てお茶出来そう?」
「はい。いつもより体が軽いので平気です」
ーーいつもより?ーー
それはそれで問題があるような気もするけど、心配し過ぎもどうかと思った俺は、ベッドから気持ち遠い窓際の奥の席へと座り。ラーリングは、向かい合う形で比較的にベッドから近い席にゆっくりと腰を下ろした。
「龍碑、竜祈。念のため結界と盗み聞き防止しといて」
「ストーム対策ですか?」
「それもあるけど、カインドを拐った連中のこともあるし……。何よりウォーム達と喧嘩してるんじゃないの?」
不確かな情報だけど、ラーリングがウォームの目を盗んで何かしてたのは事実なので。確認のため尋ねてみると、説明に困った様子で「そう、なるのかな」と答えた。
「言っとくけど、ラーリングにとって虐めとかパワハラに値するなら、そう言って構わないからね」
「ありがとうございます」
念のため考えられる事を例に上げてはみたが、的外れだったようで話が進まない。
ーー喧嘩してる訳じゃないのか?ーー
だけどウォーム達を避けてるようにしか見えないし、俺は優雅に紅茶を味わうラーリングの顔色を伺いながらビスケットを1枚摘まむと、頭を悩ませながらバリバリと食す。
ーーうん、昔ながらのやつだーー
容赦なく口の中の水分をもっていかれるので、鳳炎に差し出された紅茶が必須となる。
(御主人。案外スフォームさんに聞かれたくない話なのかもしれませんよ)
(あー、なるほど)
しかし、身体を共有してるから引き離す事も出来ないし……。テレパシーは、魂を区別して会話が成り立つとは聞かないしなぁ。
筆記も考えたが、視覚を共有されたら意味がないだろうし__。
「あの」
「は、はい」
「フレムさんは、WPの味方でもなければスフォームの味方でもないんですよね?」
「そうだよ」
思考を巡らせてたところに、ラーリングから話しかけられ。恐らくスフォームに聞こえているだろうけど、お構い無しに即答した。
「疑っているんですか?」
「まぁ色々と矛盾してるからね」
WPはウォーム達を助けるつもりないのに長期滞在してるし、スフォームがラーリングのためにならない事をするとは思えないというのが俺の勝手な持論だ。
「ラーリングも不思議に思ってることぐらいあったりするんでしょ?」
「まぁそうですね」
「例えば?」
するとラーリングは、視線を天井に向けて悩まし気な表情を浮かべ後、スフォームを気にした様子で俺に質問する。
「どうしてスフォームを疑ってるのに、施設に就職したんですか?」
「その方がラーリングに会えそうだから」
質問した本人には悪いけど、実際そうなので仕方がない。相手が言葉を失った隙に紅茶のお代わりを催促すると、鳳炎が慣れた手付きで注いでくれる。
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