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「あ、あのっ、他に理由は?」
「そう言われても……。ラーリングは、幽閉されるのと利用されるの。どっちの方がマシだと思う?」
何を指して言ってるのかは言わないが、施設に就職を決めた時の一番の理由はそこにある。言葉としては、どちらも願い下げと思うはずだ。
「ましてや情報を制限され、約束した相手に会えないとなると、ある程度のリスクで得られる自由の方が魅力的に感じるでしょ」
「だから施設に就職を?」
「逆に魔法が使えなくて、全く記憶を思い出すような事がなければ、また違った答えを出してると思うよ」
要するに、あくまで自分都合の決断。
それも魔法が使えるからと、いい気になってるところがあると我ながら分析している。
「じゃあ魔石に携わる職に就いたのは?」
「それこそ事の成り行きだよ。昔の俺だったら、また違った選択もあったかもしれないけど。その場合、WPの差し金確定だからね」
記憶が曖昧とは言え、夢で見たラーリングとの出会いが本当なら尚更だ。
「……フレムさん、記憶が……」
「だからどんな結果でも後悔しないよう、いろんな可能性とデメリットを天秤にかけて此処にいるんだ。故郷を知る鳳炎には悪いけど、ラーリング達の事が気になったしね」
「おや。そんな事気にされなくても、私は御主人の傍にいられるだけで幸せですよ」
ーーげふっ!!(吐血)
美形の愛が重い!ーー
表情が分かり難い竜の姿であれば、軽く受け流す事が出来るけど……。
アニメでしか聞いた事がない歯が浮くような台詞に、思わず口にした紅茶を吹きそうになって咳き込んでしまった。
「だ、大丈夫ですか? フレムさん」
「ご、ゴメン。思わぬ告白に受け身が取れなかったわ」
言った本人は、俺の反応を見て嬉しそうだけど……。今は男だった記憶より、女だった記憶の方が強いから止めてほしい。
「人前だと反応に困りますしね」
「だよね。ラーリングも経験があるの?」
「はい。〔此の世界が滅んでも、お前が生きてさえいればそれでいい〕とか真顔で言われた時は、さすがに殴りたくなりましたよ」
ーー人前とかの問題じゃなかったーー
それもラーリングに一途なスフォームの発言だとしたら、本気で実行しそうで怖い。
「でも今回のような事がなければ、そんな事言わなくなるんじゃないかな」
「そうでしょうか」
「だってラーリングが健康で元気だったら、そんな事する必要がなくなるし、何かと協力してくれるようになると思うよ」
ーー過保護な性格は、
変わらないだろうけど……ーー
それでも今の状態では、告白通りのことを仕出かしそうなので、ラーリングには対策してもらいたいというのが本音だ。
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