13人が本棚に入れています
本棚に追加
「この世界に来る前はどうだったの?」
「この世界に来る前ですか?」
「今とは違って、ラーリングが働いてスフォームがのんびり待機してたとか?」
余りイメージがないと言ったら失礼だけど、夢の中で見たラーリングは活発に何かしらしている印象があったので尋ねてみた。
するとラーリングは、「いえ」と手短に否定してから過去の出来事を教えてくれる。
「スフォームも働いていましたよ。極秘でフレムさんに頼まれた仕事は、スフォームがほとんどやってくれてました」
ーーマジか。
でも鳳炎は、ラーリングやスフォームの事を知らなかったようだし、記憶がないから弁解も何も出来ないけど……。記憶がないからこそ鳳炎から責められないのか、視線が痛いけど怒られずに済んだ。
「結構ハードな仕事してたんだね」
「そうでもないですよ。数ヶ月に1度ぐらいの頻度でしたし、定期的にスフォームの魔力を消費しないと暴走してしまうのですが、ウォーム達を使役するようになってからそれも必要なくなりして。ぼくの我が儘でキアを使役するようになってからは、ほぼプー太郎でした」
ーープー太郎。
要は無職になったという事だが、ラーリングがその言葉を使うとは思っていなかった。
でも夢の中であれだけ俺が心配していたのだ。恐らく体調管理を優先した生活を余儀なくされたのだろう。
「代わりにウォーム達が稼ぐようになって、やることと言えば、カードに封じられし者に関する情報集めでした。ウォーム達の証言によると、被害者がまだいるようなので」
「じゃあ昔の俺は、地道にどうにかしようとしてた訳だ」
鳳炎やムグルの力を借りなかったのが、些か引っ掛かるけど……。恐らく実家に帰れば分かる事だろう。
「詳しい事は、ぼくよりスフォームの方が」
「え、あ、今は自分の事で手一杯だからいいや。また必要になった時に教えて」
大体何か分かれば、ウォームをそのまんまにしてるはずがないし、目の前にあることを何一つ解決出来ていない時点で昔のようにはいかないはずだ。
「ところでラーリングの今後の予定は?」
「ぼ、ぼくの、ですか?」
「そうだよ。暫くは安静でいるよう言われるだろうけど、スフォームの都合で施設を点々とするなら予定を知っておきたいと思って」
すると早速スフォームと相談しているようで、ラーリングは瞑想を始めた。
(スフォームさんとは喧嘩していないのでしょうか?)
(どうだろ?)
兄弟喧嘩しても必要なことは相談してた長女の経験としては、必要最低限レベルの馴れ合い=仲良しという公式はない。
でも余り揉めてる様子は伺えないので、鳳炎が不思議に思うのも分かる。
最初のコメントを投稿しよう!