第71話/月の出

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「あ、あの、フレムさんの予定は?」 「ん? まだ優先順位決めてないけど、ラーリングがこの施設にいる間は、ウェイクの施設に行く事になるんじゃないかな」  スフォームによって幽閉的な三日間を過ごしていた最中、レディウスから連絡が入ってそうだし、俺が提案したことをウェイクに押し付けるよいな真似はしたくない。 「例の浄化作戦ですね」 「うん。早いとこケリ付けて、カインドを探しに行きたいと考えてるとこ」  無論そんな簡単に解決出来る問題ではないだろうけど、WPやLiderがあてにならない以上自分達で何とかしなくてはならない。 「まさか見当がついているんですか?」 「そういう訳じゃないけど、敷地内の蟻の巣はどうにかしなきゃだし、(アント)を引き連れて来たってことは多少なりとも繋がりがあるんじゃないかと思って」  それにWPの護衛と合流する頃合いに実行すれば、施設の守備を削ぐことなく探索出来るはずだ。まぁそこまで都合良くいけるかはさておき、俺は余裕綽々とばかりにビスケットを頬張った。 「フレムさんは、もうそこまで考えているんですね」 「あくまでラーリングが、スフォームとならの話だけどね」  ーーというのも俺は、意図的にラーリングが人体の健康維持を魔族であるスフォームに丸投げしたんじゃないかと考えている。  彼は見た目以上に経験を積んでるはずた。  当然人間の体調管理をよく知らない魔族に丸投げしたらどうなるか。ある程度の事は想像出来たはずである。 「……さすがに気付いたんですね……」 「何か可笑しいな、と思ったのは看病の最中だけどね」  でも同じ身体を共有しているスフォームにも聞かれてる事もあって、踏み込んだ質問は恐らく答えられないだろう。俺は、少し考えをまとめてから話を進める。 「まぁ皆のためにも、暫くは安静にしてもらうとして。その新月状態は止めてほしいな」 「新月状態?」 「今ラーリングの姿なのにスフォームの魔力しか感じなくて、さすがに不安になるんだけど……」  するとラーリングは、驚いた表情でおもむろに自身の両手を見つめた。反応からして、無意識にそうなっているんだろう。  俺はラーリングの不安を煽らないよう、テレパシーで(ねぇ、鳳炎)と相手に声をかけてから疑問に思ったことを問う。 (魔法や魔力って、劣化や退化ってするものなの?) (そうですね。魔法を使う頻度によって、使用出来る魔力量が減ったり、呪文を唱えないと発動しないケースはあります。つまり筋肉と同じで、普段魔法を使わないでいると(たる)んでくる感じですね) (使えなくなる訳じゃないわけだ)  それなら今のラーリングの状態は、ある意味納得出来る状態だ。光の民の変異種とは言え、浄化を得意とする月の民。その力を振るうことなく、毎日のようにスフォームの力を借りていたとしたら__。
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