第72話/これからの期待と不安

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「ストームには僕から伝えとくよ」 「私は今の内に食事でもしようかしら」 「じゃあ話し合いに同行するつもりは?」 「ないよ」 「私もそんな度胸はないわ」  ーーですよねぇ。  グレイが行来してる限り、表向きの窓口はラーリングだろうし、同行したからと言って口を出せる立場でもなさそうだ。 「そんなに機嫌悪かったの?」 「いや、以前に比べたら落ち着いた印象を受けたよ。ただ僕らがいると、逆に話が進まない気がするから」  しかも部屋までの道のりは鳳炎が知っているからと、着替え終えた俺を見送った二人は予告通り別行動を始めたようだ。 (どんだけ(こじ)らせてんの? あの二人) (確認したところ、スフォームさんも仲直り出来た訳ではないさそうですよ) (そうなの?)  ラーリングがいる部屋までの移動中、小型ドラゴンへと姿を変えた鳳炎を肩に乗せた俺は、愚痴るようにテレパシーで雑談。  使用頻度が上がった事で、相手を認識すれば自然とテレパシーが出来る程の腕前にはなりつつある。 (喧嘩の要因がさっぱり分からんのだけど) (聞いた話によると、良かれと思ってやってる事がバレて裏目に出たそうですよ) (つまり秘密裏に計画していた事が、ラーリングにとって余計なお世話だった。て事か) (そうですね)  大体秘密にしてる時点で、ラーリングが反対する要因があったんだと思うけど……。  その結果、人間の健康管理に疎いスフォームに身体を預けて引きこもったラーリングの心情を察するに、死んだ方がマシだと考えたのだろう。    ーー嫌な予感がするなーー  仲直り出来ない理由として、バレた計画が実行に移されたままの可能性もある。  誰かに教えてもらいたいけど、その誰かに心当たりはないと言うか。考える限り、何かあっても誤魔化されるのがオチだろう。  俺は重くなった気を軽くするように溜息を吐くと、鳳炎の案内で無事に見覚えのある渡り廊下の前まで辿り着いた。 (話ぐらいは聞いてくれるはずだけど) (勝算は?) (あったら溜息なんか出ないよ)  友達と言えど、感覚的には最近知り合った同級生。何が地雷になるか検討も付かないまま渡り廊下を歩いて行くと、開いた部屋のドアからひょっこりグレイが姿を現した。 「あ、本当だ」 「グレイ」 「ラーリングさんが、もうすぐフレムが来るんじゃないかって教えてくれたんだ。昼御飯、一緒に食べる気なんでしょ?」 「うん。グレイも一緒にどう?」 「いいの?」 「ラーリングに確認してみるよ」  そもそも話が筒抜けなので、OKと言ってくれるんだろうけど……。室内に顔を出した俺が「ラーリング」と呼び掛けると、嬉しそうに「いいですよ」とのお言葉が返ってきた。
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