第72話/これからの期待と不安

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「それじゃあ人数分の食事を持ってくるから、フレムも部屋で待っててよ」 「それは有難いけど……」  人数分と言うことは、3人分?  いや、鳳炎が人型で食べるなら4人分か?  主である俺でも頭を悩ませるぐらいなのだから、グレイも後々困る事だろう。ーーとは言え、命令を下す事に慣れていない事もあって。俺の肩を止まり木代わりにしていた鳳炎をチラ見すると、意図を察して人型へと姿を変えた鳳炎がグレイに申し出る。 「私に手伝わせて下さい」 「え、でも、護衛が」 「その点に抜かりはありません。優秀な護衛は、私だけではありませんからね」  すると我らの事かと、出迎えがてら部屋の前に姿を現した龍碑と竜祈が尻尾を振って、行儀良くお座りしたところで一吠えした。 「それに御主人は、ラーリングさんに用があるそうなので。暫く部屋から離れないかと」 「あ、それって探索に向かう人選のこと?」 「ラーリングから聞いたの?」 「うん、フレムなら相談に来るだろうって」  俺から確認すると、悪びれる様子もなくグレイが肯定したので。随分とまぁ大胆な話題をするまでの仲になったんだなぁ、と思った。  まぁスフォームが見逃してる時点で、敢えて泳がしてるんだろうけど……。ラーリングの良い話し相手として認めているのなら、彼に留守を任せても良いかもしれない。 「あ。言っとくけど、ボクは同行しないからね」 「その心は?」 「足手まといになるぐらいなら、大人しく帰りを待った方が鳳炎さんのためになりそうだから」 「御名答」  何より俺のためじゃなくて、俺を守り手である鳳炎の為というところがポイント高い。グレイが同行した場合、誰が彼の守り手に抜擢されるのか。理解してるからこその判断のようだ。 「まぁ俺自身、どこまで守れるか不安だから相談しに来たわけだし」 「だよね。それじゃ暫く鳳炎さんを借りるよ」 「うん。朝昼兼用だから、少し多めが良いな」 「分かった、交渉してみるよ」  部屋を出るグレイと入れ替わるタイミングで希望を伝えると、龍碑と竜祈が退き際を弁えてラーリングの元へ駆け寄り。ドアを閉める前に軽く手を振って二人を見送った俺は、紅茶を嗜んでいた形跡が残るテーブルを背に、ご機嫌な様子で椅子に座って待っていたラーリングの歓迎を受ける。 「いらっしゃい」 「待たせてゴメンね」 「気にしないで下さい。飲み物持ってきますね」  そう言って席を外したラーリングは、不思議そうに真向かいの席に座った俺に、昨日作って見せてくれた〈聖夜の水〉を振る舞ってくれた。
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