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「それじゃあ人数分の食事を持ってくるから、フレムも部屋で待っててよ」
「それは有難いけど……」
人数分と言うことは、3人分?
いや、鳳炎が人型で食べるなら4人分か?
主である俺でも頭を悩ませるぐらいなのだから、グレイも後々困る事だろう。ーーとは言え、命令を下す事に慣れていない事もあって。俺の肩を止まり木代わりにしていた鳳炎をチラ見すると、意図を察して人型へと姿を変えた鳳炎がグレイに申し出る。
「私に手伝わせて下さい」
「え、でも、護衛が」
「その点に抜かりはありません。優秀な護衛は、私だけではありませんからね」
すると我らの事かと、出迎えがてら部屋の前に姿を現した龍碑と竜祈が尻尾を振って、行儀良くお座りしたところで一吠えした。
「それに御主人は、ラーリングさんに用があるそうなので。暫く部屋から離れないかと」
「あ、それって探索に向かう人選のこと?」
「ラーリングから聞いたの?」
「うん、フレムなら相談に来るだろうって」
俺から確認すると、悪びれる様子もなくグレイが肯定したので。随分とまぁ大胆な話題をするまでの仲になったんだなぁ、と思った。
まぁスフォームが見逃してる時点で、敢えて泳がしてるんだろうけど……。ラーリングの良い話し相手として認めているのなら、彼に留守を任せても良いかもしれない。
「あ。言っとくけど、ボクは同行しないからね」
「その心は?」
「足手まといになるぐらいなら、大人しく帰りを待った方が鳳炎さんのためになりそうだから」
「御名答」
何より俺のためじゃなくて、俺を守り手である鳳炎の為というところがポイント高い。グレイが同行した場合、誰が彼の守り手に抜擢されるのか。理解してるからこその判断のようだ。
「まぁ俺自身、どこまで守れるか不安だから相談しに来たわけだし」
「だよね。それじゃ暫く鳳炎さんを借りるよ」
「うん。朝昼兼用だから、少し多めが良いな」
「分かった、交渉してみるよ」
部屋を出るグレイと入れ替わるタイミングで希望を伝えると、龍碑と竜祈が退き際を弁えてラーリングの元へ駆け寄り。ドアを閉める前に軽く手を振って二人を見送った俺は、紅茶を嗜んでいた形跡が残るテーブルを背に、ご機嫌な様子で椅子に座って待っていたラーリングの歓迎を受ける。
「いらっしゃい」
「待たせてゴメンね」
「気にしないで下さい。飲み物持ってきますね」
そう言って席を外したラーリングは、不思議そうに真向かいの席に座った俺に、昨日作って見せてくれた〈聖夜の水〉を振る舞ってくれた。
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