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「今朝調子が良かったから作ってみたんです」
「いいの?」
「栄養ドリンクの代わりに飲んで下さい」
つまり飲み過ぎてはいけない代物だが、今の俺には必要だと思って作り置きしてくれたようだ。
「ありがとう」
「体調に問題はないんですか?」
「今のところはね」
ラーリングに差し出されたコップを受け取った俺は、常温なのは残念にしても、価値のある聖夜の水を半分まで飲んだところで本題に入る。
「ところで話を聞いて来たんだけど」
(そもそもウォーム達、魔法使えるの?)
するとラーリングは、向かい側に座って「仕事の件ですね」と確認してからテレパシーで答える。
(正直、3人いっぺんに使われるとキツいです)
(ですよねぇ)
いくら体調が良くなったとは言え、栄養不足なのは変わりないし、体力は俺より無さそうだ。
「人選はスフォームが考えたり?」
「いいえ。現状維持したまま、フレムさんが仕事に向かわれる場合のぼくの意見です」
「じゃあスフォームの意見は?」
「そもそも見習いが引き受ける案件じゃないとか」
ーーそれは言えてる。
上司としての意見としては百点満点だろう。
だけどウォームとウォーターに任せて、何かしら収穫があると思えなかった。
「フレムさんとしては、どうしたいですか?」
「俺? 俺は……。探索が歩きなら、龍碑と竜祈を連れて行きたいと思ってたけど……」
でもウォーム達が魔法を使えないなら話は別だ。
歩いて行ける距離とは言え、極端に施設の守りを疎かにすれば、再び誰かが拐われるかもしれない。
そんな事を考えていると決断出来なくて……。
黙っていたラーリングが痺れを切らして言う。
「ぼく個人の力だけでは頼りないですか?」
「それは立場が逆になっても、ラーリングは病み上がりの俺を置いて行けるってこと?」
「それは……」
「俺は単純に、病み上がりのラーリングに無茶してほしくないだけ。それに眼の前でカインドが拐われた以上、油断は禁物だと思う」
「今の現状を見越して、相手が仕掛けてくる可能性を恐れているんですね?」
それに対し、俺は深刻な表情で頷くと、都合の悪い内容から今度はテレパシーで話を進める。
(ウォーム達に魔力を分けても、発動時の負担は主であるラーリングの肉体が引き受けるんだよね?)
(あ、いえ。それ以前の問題として、スフォームの魔力以外は受け付けない性質で。あっちの、元居た世界では極力魔法アイテムを使ってたぐらいです)
それを聞いて、洒落た物ではないにしろ。
典型的で、今の俺でも作れる魔法アイテムに心当たりがあった。以前、この世界に根付いた魔石を説明するのに用いた人工的に作られた魔石である。
あの時は、魔法と縁のないグレイに使わせたから怒られたけど……。元から魔法が使えるウォーム達が使うのは問題ないはずだ。
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