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「何か閃きました?」
無意識に口角が上がってしまったのだろう。
俺の様子に異変を感じたラーリングが声に出して尋ねてきたので、俺は頷いた後に提案してみる。
「魔法アイテムとして、人工魔石を使うのはどうだかな? それぐらいなら今の俺でも作れるし、この世界の人に使わせたり、さすがに身を守る事以外で使ったら怒られそうだけど……」
すると直ぐには返答せず、スフォームに尋ねているのか。暫く間を置いて考えたラーリングは、判断に悩んで俺に質問する。
「でも根本的な解決策にはなりませんよね?」
「そうだけど……。ラーリングが元気になれば、問題なくなるよね?」
何より俺は、一時的な問題解決のために提案してるだけだ。でなければ、必要だからと言って大量生産した日には別の問題が浮上するに決まっている。
しかし、途端に相手が沈黙してしまった事から、俺は首を傾げた後にジト目で聞き方を変える。
「元気になるつもりないの?」
「へ?! そ、そんなことないですよ。ただ戦闘出来る程の体力って、そう簡単に身に付くものじゃないので」
「あ、別にそこまでムキムキになって欲しいわけじゃないよ。倒れる寸前まで、スフォームの力を借りて過ごしてたんだよね?」
でなければ、ウォーム達を避けて移動なんて難しそうだし、スフォームが責任を感じて慌てふためく事もないはずだ。
俺が誤解に気が付いたところで否定すると、ラーリングは思わぬ擬音に面食らいながらも、表に出てこないスフォームの代わりに現状を教えてくれる。
「でも今は病み上がりなこともあって、緊急時以外力を貸してくれそうにないですけど……」
「だろうね」
(多分ウォーム達も、暫くはラーリングの体調を考えて魔法を使わないはずだよ)
そんな時に緊急事態が起きたらどうなるか。
スフォームを知るラーリングは、最悪な結末に繋がりかねない事に気付いて深刻な表情を浮かべる。
「だから魔法アイテムを……」
「嫌?」
「いえ、むしろ有り難いです」
「良かった」
(スフォームも乗り気なら話を進めるけど)
姿が見えないのに名を出すのも都合が悪そうなのでテレパシーを送ると、今度は手短に瞑想してからラーリングが応える。
(問題ないですよ)
「人選もフレムさんの都合に合わせて下さい」
「いいの?」
「はい。経緯は、事前にスフォームがウォーム達に伝えるそうです」
「有難う。助かるよ」
これで上手く事が進むかは分からないけど、龍碑と竜祈を連れて探索出来そうだ。人選については、ウォーム達の意見も踏まえて決めるとしよう。
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