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会話が一段落した頃合いを見計らって、残った聖夜の聖水に口を付けると、ラーリングが新たな話題を俺に振ってくる。
「でもフレムさん、さすがに首を突っ込み過ぎではないですか? グレイさんが心配してましたよ」
「グレイが?」
彼が俺を心配するのは常日頃だけど、初対面の人間に愚痴るとは珍しいとばかりにオウム返しすると、ラーリングは小さく頷いてから話を続ける。
「真面目なフレムさんの事だから、責任感じて何でも引き受けるんじゃないかって」
「あ〜、なるほどね」
個人的には、そこまで出来た人間じゃないと思っているんだけど……。第三者の視点からすると、頼まれた事を嫌とも言えずにこなしているように見えるのだろう。
「心配しなくても、今回は俺の魔法が影響していないか確認するだけだし、研究者も同行するって聞いたから知らない事を教えて貰おうと思って」
「それだけ楽しんでると言う事ですか?」
「まぁね。それにWPPOが相手なら、何かと大目に見てくれそうだけど……。時空警察がしゃしゃり出て来たら、そうもいかなくなるからね。多少なりとも言い返し出来る情報は入手しないと」
勿論取り越し苦労になる可能性もある訳だが、それはそれで面倒臭かったと笑い話にすれば済む事なので気にしない事にする。
「色々と考えた末の結果なんですね」
「大体これ以上評価を下がったら、逮捕状持って乗り込んで来そうだからね。ラーリング達と一緒に帰るためにも、出来る事からコツコツと頑張るよ」
我ながら気の長い計画だと思うが、個人的に今まで生活していた英里の世界に戻れない現実を受け止める時間が必要なので好都合と考えるべきか。
気合いを入れ直すようにファイティングポーズで締めくくると、ラーリングも拳を握って応える。
「ぼくも、まずは体力をつける事から頑張ります」
「じゃあ元気になったら買い出しに行こうよ。案内出来ないから、グレイを連れていかないとだけど」
「いいですね」
ついでに護衛として誰かを連れて行かなければ、過保護なスフォームが許可してくれないはずだ。
それでも会話に割って入ってこないのは、彼なりの心遣いなんだろう。
お陰で好き勝手話を進めて、グレイと鳳炎が食事を運んで来る頃には、宿泊計画を立てていた。
事態が思わぬ急展開を迎えてると知らずに……。
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