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第73話/実績と成果が齎すモノ
一方楽しく昼食を済ませた俺は、小型ドラゴンへと姿を変えた鳳炎を右肩に乗せ。鼻歌交じりに屋上へ向うと、スフォームから事前に知らせを受けて待機していたストームと屋上の出入り口前で顔を合わせる。
「随分と御機嫌やな、フレム」
「ふふん♪ ラーリングと旅行する約束したんだ」
別に隠してる事ではないので、自慢気に話したところ。ストームは「そらえぇ事やな」と言って、付いて行くとは言わなかった。
――可怪しい。
楽しそうな事なら同行しそうなのに、若干遠慮ぎみな様子からして仲直りに失敗したのだろう。
確認はしないが、旅行に行く事になったら送迎してほしいので事前予約しておく。
「行く事になったら送迎してくれる?」
「そら、行けるようになったらな」
「反対しないんだね」
俺よりラーリングの容態を知ってそうなもんだけど、ストームは閉ざされた屋上の出入り口を開けながら俺の質問に答える。
「何の楽しみ無いのも問題あるやろ?」
(それに、これから忙しくなるや。モチベーション上げてかんと、やっとられへんで〜)
(どういう事?)
途中からテレパシーへと切り替えたストームに首を傾げて尋ねると、意味深な笑みを浮かべて屋上からの展望を勧めるように移動。
方角的には、ラーリングが使用している部屋の窓とは反対側。記憶が確かなら、最も救世主の潮がかかったであろう森を見下ろせる場所に辿り着いた。
「結構明るいもんだね」
「増殖しよる光る木々の所為やろな」
(この世界の生活に欠かせん〈白の領域〉と言うらしいで)
満天の星空の下、黒々としていた森に点々と見える白い群集。普段風に靡く葉音は聞こえても、視覚で捉えられるのは深海のような漆黒の森だと言うのに珍しいものだ。
「アレが調査対象?」
「そうや。近いゆうても2キロは歩かなアカンし、整備された道もならへんから、ワイ等のような魔法使いに任せた方が早いとは言うたんやけどな」
(鋭い眼光で拒否られれたわ)
「まぁそれは仕方ないんじゃないかな」
(生活に欠かせないモノをパチられる訳にはいかないだろうし)
因みに〈パチられる〉とは、関西弁で〈盗まれる〉と言う意味なのだが……。ストームは、その意味を知ってるのか。突っ込みされることなく「それもそうやな」と答えてから踵を返した。
「ほんじゃまっ、ワイ等も準備せなアカンな」
(話はスフォームから聞いとるで)
「何処で打合せするの?」
「ウォームの部屋や」
(ラーリングのとこはグレイが行き来しとるしな)
そこでストームの後を追うように屋上を後にすると、移動中やたら目が合うLiderにペコペコと頭を下げて、時には「お疲れ様です」と伝えながらも華麗にスルーした。
ーーと言うのも、目が合うLider面々は俺に話しかけたそうだが、それをストームが許さないのだ。
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