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「見た目を気にしなくても大丈夫だよ」
「そう言う訳にはいかないよ」
WPに許可を得た代物ではないし、Liderにバレたら欲しがる可能性だってある。そうなったら色々と面倒事が増えると思った俺は、ふと小型ドラゴンの姿で待機している鳳炎を目にして誰となく尋ねる。
「そう言えば、鳳炎とウォームって。風属性を除けば同じなんだよね?」
記憶は定かではないけど、上手くいくような気がして。一回り身体のサイズを大きくした鳳炎から白い羽毛を1枚貰うと、ウォームの右中指に収まるよう調整して指輪を作った。
見た目は燃えやすそうな素材なのに、炎属性を受け入れた羽毛は黄金色に輝き。程なくして銀色に落ち着いた様は、アクセサリーそのものである。
試しにウォームが手の平サイズの火球を作り出すと、予想より強火だったのか。即座に火球を握り潰すように消したが、指輪が使用時に黄金色に輝いたのは確認出来たのでヨシとする。
「これで準備万端やな」
「フレムちゃんのお蔭ね」
「予定の変更は?」
「ないよ。今から寝れば問題ないだろうし」
そう言って腰を上げた俺は、身体のフラつきを認めて立ち上がるのを止め。それに気が付いたウォームが「そのまま横になった方がいいよ」と、手を添えソファーの上で寝る事を勧められた。
「ごめん」
「別に怒っちゃいないよ」
「魔法アイテムを連続で3つも作ったのよ」
「後はワイ等が何とかしとくさかい」
相変わらず中途半端な好意にも関わらず、責められる事なく気遣われて。感謝とは別に歯痒さを感じたけど、無理をして予定まで変更する訳にはいかないので御言葉に甘える事にする。
「鳳炎がフレムの傍から離れない限り、大丈夫だとは思うけど。鍵は閉めて行くよ」
「その方がえぇわ」
「フレムちゃん、無理しちゃダメよ」
その他に「夕食時には様子を見に来る」とか「飲み物が必要なら」と、何かと世話を焼いてくれる声がしてたけど……。重くなった瞼を閉じて直ぐ意識が飛んだのか。目が覚めた頃には、薄暗い部屋に取り残されている状態だった。
ーー鳳炎がいるはずだけどなーー
不安になって起き上がると、人型の鳳炎が明かりとなる魔法を浮遊させながら寝室から現れホッと胸を撫で下ろす。今までの経験からして、彼が俺を置き去りにすることはないと思うけど……。いざ独りになると、マイナス思考が走っていけない。
「起きてしまったんですね」
「うん、鳳炎の姿がなくてびっくりしたよ」
「申し訳ありません。さすがにベッドに移そうかと思って席を外しました」
それを聞いて、夕食タイミングを逃した深夜帯に起床してしまったことに気付いた俺は、魔法の明かりを消して部屋の明かりを付けた鳳炎に尋ねる。
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