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(ストームの話が本当なら、このまま白の領域が増えていくのは良い事なんだろうけど)
(善悪が入乱れる異様な気配を感じますね)
(鳳炎の視力でも確認出来そうにない?)
白の領域の影響で明るくなってきたとは言え、人間の視力では無理だと判断したところで尋ねてみると、主語がなくとも何を指しているのか理解してくれたようで。ジッと周囲を見下ろした後、テレパシーで結果を伝えてくれる。
(大物がいれば別ですが、木々の密度的に厳しいですね。それに白の領域が拡大するメカリズムが分からないので、視覚による調査は無理があるかと)
(だよね)
だからと言って足を踏み込んだことのない森に、異常承知で調査というのは無謀過ぎる。
そうじゃなくても、夜目がきくレベルでは安全の保証が出来ない異界の森だ。慎重になるぐらいが丁度良いだろう。
(調査をするとして、連れて行けるとしたら森に詳しい人か。我が身を守れる人かな?)
俺自身がギリギリアウトのような気もするけど、鳳炎は手短に(そうですね)とテレパシーで同意した後、主である俺の顔色を伺いながら尋ねる。
(御主人は怖くないのですか?)
(怖いよ。ただ鳳炎達がいるから、何とかなりそうな気になってるだけで)
大体夜道も怖いと思うぐらいビビリ体質なのに、異世界の暗闇の中で探索する先が森とか。魔法が使えなかったら我が身可愛さに断ってることだろう。
(私達を頼って下さるのは嬉しいことです)
(そう言ってくれると有り難いよ)
けど他力本願では、この先立ち行かなる。
何とか自分の力を底上げしなくてはと思う反面、普段気付かない振りをしている期待の眼差しが痛くて敵わない。
――そろそろ引き上げるか――
けれど頃合いを見計らったように、見覚えのあるLiderの一人が俺に声をかけてくる。
「体調はいかがですか?」
一目で名刺をくれた人だと気付いたけど、名前が浮かんでこなかった俺は硬直。それでも無愛想な顔を浮かべないのは、初見ではないからである。
(知り合いですか?)
(名刺をくれた人なんだけど……)
名前が浮かんでこないから、鳳炎に紹介する事も出来ず、唯一覚えていた事を口に出す。
「確か初動隊の……」
「オリバーと申します」
「すみません。名刺を頂いたのに……」
「めいし?」
認識の違いなのか。はたまた文化の違いなのか。
そもそも名称が違う可能性も考え、俺が名刺だと思ったカードを上着の内ポケットから出して見せると、相手は納得した様子で相槌を打った。
「あぁ。それはプレートと言うもので、自己紹介とは別に急な呼出しを許可する代物ですよ」
「えっ! じゃあウォーム達もコレで呼び出しをしてるわけですか?」
何より見たことがない代物だったので、施設で働く者として認められた気がして嬉しかった。
しかし相手は、俺の問いかけに「いえ」と手短に否定してから答える。
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