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「それは特別な物で、おいそれと渡せる物ではありません。他人に譲渡されてしまうと、フレム様の評判を悪くしてしまう可能性もありますので。お取り扱いには十分気を付けください」
――へ?
一通りの説明を聞いて、情報を整理した結果。
今直ぐにでも返したいと考えてしまったけど、それはそれで余計な波紋を呼びそうで怖い。
裸眼では読めそうにもないプレートを眺め、下っ端の気持ちを察してくれとばかりに眉を潜めてからも質問を重ねることにした。
「普段皆さんはどう保管しているんですか?」
「必要枚数を専用ケースに入れて、肌身離さず所持してるのが一般的ですね」
「その保管ケースは、頼めば入手出来ます?」
「優遇出来ますよ」
「良かった。因みに貸し出すのは?」
「厳禁です。番号で所有者を特定出来ますし、フレム様に手渡したのはご報告済みなので。すぐ特定されますよ」
つまり、何かしらの条件をクリアした者だけに手渡されるレア物なんだろう。それもウォーム達には当てはまらないようだけど……。
「でも身分的にちょっと不都合が生じませんか?」
所謂、妬たみの要因にしかならない物を所持するのは気が進まないと言うか。助けてもらった恩人に嫌われるのだけは避けたい一心で質問すると、相手は何が言いたいのか察して逆に尋ねる。
「では貴方がウォーム様を評価しているのは、貴方の上司だからですか?」
「それは違いますけど……。長年此の世界に尽くしてるウォームが評価されないのは、どうしてですか?」
あー言えばこう言うじゃないけど、納得出来ない理由を上げると、彼は困った表情を浮かべた。
――言えない理由があるのだろうか?――
固唾を呑んで返答を待つと、彼は周りの視線を気にしながらも人差し指を口元に寄せた後、腰を少し屈めて周囲から口元を隠すように遮ったところで察する。
――内緒話だ――
そこで体を傾けて左耳に手を添えて見えると、オリバーは幼い子に語りかけるように耳元で答える。
「彼等は秘密が多すぎます」
「自分も都合の悪い事は話してませんけど?」
「それは我々も同じですから」
――どう言う事だろう?
度合いの問題にしては、複数形なのが気になる。
もしかして彼等は、俺がスフォームに肩入れするために施設を選んだ訳じゃないと気付いているのかもしれない。
「それに俺は、貴方の事をよく知りません」
「自分も知っているのは貴方の評判で、貴方自身を知っている訳ではありませんけど……。急な呼び出しを何度もくらう身としては、相手ぐらい選びたいものじゃないですか」
――あー、なるほどね。
誰かに唆されたにしても、自分の都合を考えて渡す相手を決めているようだ。
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