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移動途中駆け足で合流したウォームと部屋へ連行された俺は、二人と対峙するようにソファーに腰掛け。鳳炎は逃げるように俺の肩から飛び去ると、人型になって俺の斜め後ろに控える。
「そんな大した事じゃないよ?」
「どこがや」
「Liderに知れたら騒ぎになるって聞いたよ?」
――そこまで告げ口してるんだ。
大げさに言い過ぎたな、と後悔する反面。
何故教えてくれなかったのかと、責められる前に話し合いの場を設けてくれて有難いと思うべきか。
「ちょっとLiderにとって、デリケートな話ってだけだよ。一緒に話を聞いてたグレイは、特に驚いた様子はなかったし」
「つまりグレイは気付かなかった、という事だね」
「どう言うことや?」
そう言われると説明に困るけど……。
恐らくグレイが驚かなかったのは、それが此の世界を左右する出来事とは思ってないんだろう。災害が何度も起きたら、そういう土地柄なんだろうと勝手に思い込んで油断するのと一緒だ。
でもウォームとストームには、それ以前の基本的な知識と情報が足りないような気がするので。何故俺が危機感を覚えたのか伝わるように、まずラーリングから聞いた話を教える事にする。
「え〜とね。そもそも救世主は、災厄にも救世主にもなる存在で。今回俺とストームが目撃したのは、白い潮を吹いたけど。ラーリングは、ウェイクの施設上空で黒い潮を吹いてる救世主を見たことがあるんだって」
「それ何時の話や」
「Liderはその事を知らないのか」
「それは分からないけど……。救世主の白い潮で白の領域が出現し、アスタルトの数が増えてるとしたら。ウェイクの施設は、救世主が黒い潮を吹いた事で、アナトや黒の死石が増えてしまってたりするんじゃないかなぁ? と思って」
「ちょい待ちぃな。アナトは連想出来るとして、何で死石が絡んでくるんや?」
「話が飛躍過ぎると思うんだけど」
「そうかな?」
もし相手がエレクなら、成程と納得してくれそうなもんだけど……。そこまでアナトやアスタルトの生態に感心を持たない二人には、突拍子もない話に聞こえたようだ。俺はヒントを与えるように、クイズ形式で二人に応える。
「単純な話だよ。アナトは白い死石が好物で、アスタルトは黒い死石が好物だとしたら?」
「あっ」
「せやから抗争が起きるんか」
「さすがに正解は、白の領域を調べみなきゃ分からないけど。もし白の死石が絡んでたとして、それが救世主と関係があるとしたら……。ウェイクの施設周辺が黒の死石だらけなのも分かるし、魔石本体を浄化するだけで済む話じゃなくなるかもしれない」
なんせ今も魔石は成長している。もし魔素的な要素がある黒の死石の影響を受けて成長しているのなら、今後も聖気を保ってるとは言いきれないし、偶然目にした何かしらのモノが主沙汰になる。
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