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「悠長なことを言ってられなくなったね」
「此の世界にあるモノで浄化しきれるんか?」
「分からない。でも救世主の力を逆手に取れば、逆転も有り得るんじゃないかな」
魔法の影響ではなく、救世主の潮を受けた影響による変化なら尚更だ。但し、白の領域が急速に拡大し続ける要因を見つけ出さなければの話ではあるけど――。可能性はゼロではない。
「もしかして救世主を捕えるとか?」
「へ?」
「ウォーム。そんな危険行為せんでも、白の領域のメカリズムさえ解明すれば何とかなるやろ。期待しとるで、フレム」
――手伝う気ないのか。
ウォームの閃きにも驚いたが、ストームの他力本願な発言にもビックリだ。部下として突っ込みを控えながらもジト目で気持ちを訴えると、ウォームが気を利かせてくれる。
「それで僕等に何か手伝って欲しいことは?」
「ウェイクの安否と現場の状況の確認。それとオリバーさんに会って、採取の事で相談したい事があるから、ウォームに付いて来てもらいたいな」
「ワイじゃアカンのか?」
「だってストームは最初断られたんでしょ? さすがに断った本人前にして、OKとは言い出し難いと思うんだよね」
それについ先程、上空から圧力をかけまくった相手に会いに行くのだ。コレ以上ストームのイメージをダウンさせたくない。
「そう言う事ならしゃーないわ」
「今から会いにいくのかい?」
「さすがに迷惑かな?」
「せやけど、出発間際に言われても迷惑やろ。さっきまでウォームと会って話しとったんやし、フレムから内線でアポとってみたらどうや?」
――内線あるんだ。
まぁ無きゃ仕事にならないんだろうけど、果たして一発で連絡が取れるか微妙である。俺は少し考えた後、上着の内ポケットにあるカードの存在を思い出して提案する。
「ちょっと試したい事があるから、アポ無しで行ってみるよ」
「おっ、例のもん使ってみるんやな」
「例のもん?」
「やっぱ盗み聞きしてたんだね」
俺が独りになったところを狙って、Liderが接触するから仕方ないけど……。悪気のない笑みを浮かべたストームは、立ち上がり様に応える。
「詳しい事はフレムに聞いたらえぇわ」
「つまり隠してた訳じゃないんだね?」
「フレムは名刺とばかり思ってたらしいで」
しかし、此の世界にそんな文化は無いと知っているんだろう。納得した様子で肩の力を抜いたウォームに、ストームは軽く右手を振ってお開きとする。
「ほんじゃ後は宜しく頼むで」
「ウェイクの生存確認ぐらいしてもいいんだよ?」
だけどストームは、去り際に「それはウォーターに頼む事にするわ」と言って部屋を出て行った。
興味の無い事はしたくないようである。
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