第74話/情報共有

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 俺は黙ってストームを見送ると、軽く溜息を吐いたウォームにタイミングを見計らって確認する。 「ストームはウェイクと相性が悪いの?」 「そんな事はないと思うけど、ラーリング絡みでちょっと意見が別れてるから――」  と、ここで余計な事を言ってしまったと気付いたのだろう。目が合った俺に笑って誤魔化すと、腰を上げて話題を反らされる。 「それよりオリバーさんに会いに行くのにアポ取らないなんて、君らしくない提案だけど」 「あぁうん。実はさっき使い方を教えてもらったから、早速試してみようかなと思って」  そう言って上着の内ポケットから取り出したカードを見せてから、屋上で教わったことをウォームに報告がてら説明。貸出し不可能のため、必要な時は遠慮なく俺を頼って欲しいと伝えた。 「なるほど。で、一度は断ったりした?」 「したよ。ウォームは持ってないって聞いたから」 「でも押し切られたんだね」 「うっ。まぁ、その……。悪い物じゃないし……」  それに耳打ちであんなこと言われたら、断り切れなかった。――とは、さすがに言えない。  俺はバツが悪そうに目を反らすと、ウォームは溜息混じりに問題点を提示する。 「確かに悪い物じゃないけど、スフォームに知れたら昇格間違い無しだよ?」 「そう言われても……。すでに見習いの域超えてるとか言われたし、ウォームのように持ち場を固定されるような立場じゃなければ、やむを得ないかなって、今は思ってる」 「つまり一定の条件を満たせば、昇格する覚悟は出来ているんだね?」 「うん。まぁその、とりあえずラーリングの身に何かあった時、直ぐに駆け付けられる立場でいられるなら良いかな」  それがウォームの言う覚悟に当てはまるか自信がなくて、最終的に俯きながらの発言になってしまったけれど……。ウォームは、「分かった」と応えてから言葉を続ける。 「そこまでフレムが考えているなら異論はないよ。後はスフォームが判断することだからね」  それにしては何か怒ってる雰囲気を察した俺は、返す言葉が出なかった。怒鳴られてはいないけど、不安と恐怖が脳裏を過ぎり――。 「それじゃあ行こうか」  俯いた顔を上げると、腰を上げたウォームが普段と変わらぬ表情で俺を見下ろしていた。  ――なんか怒ってたよね?――  女性相手だったら聞ける事も、男性相手になると恐怖が先立って何も聞けず、何とか相槌を打ってウォームと一緒に部屋を出た。
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