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俺は黙ってストームを見送ると、軽く溜息を吐いたウォームにタイミングを見計らって確認する。
「ストームはウェイクと相性が悪いの?」
「そんな事はないと思うけど、ラーリング絡みでちょっと意見が別れてるから――」
と、ここで余計な事を言ってしまったと気付いたのだろう。目が合った俺に笑って誤魔化すと、腰を上げて話題を反らされる。
「それよりオリバーさんに会いに行くのにアポ取らないなんて、君らしくない提案だけど」
「あぁうん。実はさっき使い方を教えてもらったから、早速試してみようかなと思って」
そう言って上着の内ポケットから取り出したカードを見せてから、屋上で教わったことをウォームに報告がてら説明。貸出し不可能のため、必要な時は遠慮なく俺を頼って欲しいと伝えた。
「なるほど。で、一度は断ったりした?」
「したよ。ウォームは持ってないって聞いたから」
「でも押し切られたんだね」
「うっ。まぁ、その……。悪い物じゃないし……」
それに耳打ちであんなこと言われたら、断り切れなかった。――とは、さすがに言えない。
俺はバツが悪そうに目を反らすと、ウォームは溜息混じりに問題点を提示する。
「確かに悪い物じゃないけど、スフォームに知れたら昇格間違い無しだよ?」
「そう言われても……。すでに見習いの域超えてるとか言われたし、ウォームのように持ち場を固定されるような立場じゃなければ、やむを得ないかなって、今は思ってる」
「つまり一定の条件を満たせば、昇格する覚悟は出来ているんだね?」
「うん。まぁその、とりあえずラーリングの身に何かあった時、直ぐに駆け付けられる立場でいられるなら良いかな」
それがウォームの言う覚悟に当てはまるか自信がなくて、最終的に俯きながらの発言になってしまったけれど……。ウォームは、「分かった」と応えてから言葉を続ける。
「そこまでフレムが考えているなら異論はないよ。後はスフォームが判断することだからね」
それにしては何か怒ってる雰囲気を察した俺は、返す言葉が出なかった。怒鳴られてはいないけど、不安と恐怖が脳裏を過ぎり――。
「それじゃあ行こうか」
俯いた顔を上げると、腰を上げたウォームが普段と変わらぬ表情で俺を見下ろしていた。
――なんか怒ってたよね?――
女性相手だったら聞ける事も、男性相手になると恐怖が先立って何も聞けず、何とか相槌を打ってウォームと一緒に部屋を出た。
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