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(大丈夫ですか? 御主人。顔色が悪いですよ)
(マジで?)
小型ドラゴンへと姿を変えて俺の肩に乗ってきた鳳炎の忠告に、俺は両手で表情筋を軽く揉みした。
これからLiderのオリバーに会うというのに、要らぬ誤解を招いてしまっては面倒である。
(どうやらウォームさん的は、御主人を昇格させたくないようですね)
(そうかな? 俺の気がコロコロ代わるから、対処する身として怒ってるように見えたけど)
でも気持ちを切り替えたのか。俺達のやり取りに気付いて振り返ったウォームは、いつもの穏やかな雰囲気を纏っていた。
「どうかした?」
「いや、ちょっと色々と反省してただけ」
「ふ〜ん……。それは上司である僕に相談する事もなく、便利カードを受け取ったことかな?」
「そ、それもあるけど……。昇格の事は、ずっと断ってたのに……。気が変わっちゃって……」
でもウォームは、眉をひそめて申し訳なさそうに「そうじゃないでしょ?」と、俺の発言を否定してから言葉を続ける。
「出世しなきゃいけない状況下に追い込まれたのに、フレムは誰の所為にもしないんだね」
「へ?」
「まぁ心配しなくても、急にあれこれ変わることはないはずだけど……。君はもう少し怒り方を学んだ方が良いと思うよ」
間の抜けた聞き返しをしてしまったから、天然と断定されたんだろう。誰の所為にもしない理由を掘り下げることなく話を逸らしたウォームに、捨て台詞の如く忠告されてしまった。
――俺が悪いのか?
ふと疑問に思うけど、彼は俺が事情を知ってることに全く気付いてなさそうだ。此処は余計なことを言って墓穴を掘らないようコメントを控える。
「ところでLiderの駐在所に直行していいのかい?」
「オリバーさんが普段いる所?」
「まぁ居ても不在率高いけどね」
――それって居留守って言うのでは?
と思ったけど、言えばウォームを傷付けるだけなので。相槌を返した後、案内されるがまま辿り着いた先で尋ねる事にしたけど……。
ウォームが先陣きってノックすると、対応するLider隊員があからさまに不満げな顔で応じる。
「今度は何用でしょうか?」
「オリバーさんは?」
「先程席を外されましたが」
今まで随分優しく対応してくれてたんだな、と思わずにはいられないトゲのある口調。ストームだったら何か言い返しそうだけど、ウォームが後ろに待機していた俺に前方を譲ってくれたので、スムーズに取り出したカードを相手に見せることが出来た。
すると差し出されたカードと俺を交互に目にした相手は、途端に焦った顔色を浮かべて応じる。
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