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「ちょっ、お待ち下さい! ――あいてっ」
「あ、焦らなくても待ちますんで」
角で足をぶつける程の慌てぶりに、こっちが焦る程なんですが……。カード片手に待っていると、席を外してるはずのオリバーが5分もしない内に姿を現した。
「いかがされましたか?」
「すみません。ストームの話を聞いて、確認したいことがあったので。ウォームに無理言って同行してもらったんですけど……」
「えっと、つまり私に用があるのは__?」
「フレムです」
ウォームが単刀直入にオリバーの問いに答えたけど、咄嗟にウォームの裾を左手で掴んた俺は、相手の返答を待たずして希望する。
「独りじゃ不安なんで、ウォームも一緒で!」
「それは構いませんけど、話の内容は?」
「白の__」
と、危うくストームにテレパシーで教えてもらった名称をそのまま言いそうになって、空いてた右手で一旦口を塞いだ。
そして、苦笑いで誤魔化して見せるものの。
同行者であるウォームの反応からして、安易に部下の耳に入っては困る話だと判断したようだ。
「どうやら立ち話で済む話題じゃなさそうですね」
「すみません」
「それに見慣れぬ者に囲まれるのも不安でしょう。ウォーム様の部屋をお借り出来ませんか?」
俺が今だ同行者の裾を離さないことを理由にオリバーが提案すると、ウォームは冷たい待遇を受けたにも関わらず愛想良く大人の対応をしてみせる。
「構わないよ。フレムもそれでいいよね?」
「うん」
「では早速移動するとしましょう。後の事は頼む」
居留守を使った割には、何かしていた訳でもないのか。部下に一言伝えただけで通路に出たオリバーは、ウォームを先頭に俺の一歩後ろを付いて来た。
「内線の呼び出し方もお伝えすべきでしたね」
「でも字が読めないから、何かしらの番号を言えとか言われても困るんで。ついさっき会ったばかりなのに、ウォームに無理言って案内してもらったんですよ。すみません」
「いえ。こちらこそ、まさか使い方を教えて直ぐ呼び出されるとは思わず、酷い対応をしてしまって申し訳なく思います」
「昇格したら、独りで行く機会が増えると思うよ」
「え! ウォーム、付いて来てくれなくなるの?」
仕返しとばかりに意地悪で言っているんだと思うが、再びウォームの裾を引っ張って俺が尋ねると、鬼になりきれない彼は優しく応える。
「そう言う意味で言ったんじゃないよ。ただ毎回付いて行ける訳じゃないから慣れてもらわないと」
「……。」
「こちらも対応には気を付けますんで」
あからさまに眉を潜めて子供ぽい反応を示すと、オリバーも後方から腰を低くしてフォロー。そこでようやくウォームの裾を掴むのを止めた俺は、念の為「絶対ですよ」と釘を指した。
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