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オリバーはその場からゆっくり腰を上げると、呼び出した俺達に一礼をした後、ウォームに見送られる形で部屋を後にした。
「随分落ち着いた物腰でしたね」
「でも動揺はしてたと思うよ。今頃駆け足で報告に向かってるんじゃないかな」
残されたティーカップを片付けながら鳳炎が言うと、見送りを終えたウォームがオリバーの様子を振り返るように言った。
そんな大袈裟な、と思いはしたけど――。
口に出して言わなかったのは、話の途中から焦る気持ちを抑えるように拳を握っていたオリバーの姿が過ぎったからだ。
「念の為、WPにも報告しとく?」
「その場合、フレムから連絡しないといけないよ。僕等じゃ説明しきれないからね」
「それは構わないけど……。俺が勝手に連絡とっていいの? 何か言われない?」
「平気だよ。通信室にはウォーターがいるからね」
それはそれで、話を聞いてないウォーターに質問責めに合う未来が見えるんだけど……。そこは仕方ないと割り切って、仮眠をした数時間後。朝食を済ませた俺は、頃合いを見計らってウォーターに仲介役を頼んでWPPOに連絡をしたものの。何度コールを鳴らしても、相手が出ることはなかった。
「可笑しいわね」
「立て込んでるのかな?」
留守番機能があれば、聞いてないと言われても通じなかったと言い張れるんだけど……。どんなに呼び出し音を鳴らしても、案内が流れないどころか。転送される機能もないようだ。
「時空警察に連絡してみましょうか」
「いや、そこまでしなくても大丈夫ですよ」
そもそも時空警察と言われるWTPOは、WPPOと馬が合わない連中。揉め事に発展するなら、事後報告の方が都合が良いだろう。
「でも怒られない?」
「怒られるとは思いますけど、Liderの機嫌を損ねても良いことは無いと思いますよ」
それにWTPOは、WPPOに主導権を奪われる話が持ち上がっているのだ。怒られるかもしれないけど、理解のあるWPPOとの連絡が可能になるまで、今暫く待った方が利口だろう。
「あら、フレムちゃんでも損得を考えるのね。お人好しとばかり思ってたわ」
「自分はそこまで出来た人間じゃありませんよ」
現に悪い事をしてるかもしれないと噂される施設で働くのは、命を救ってくれたからではない。あくまで自分の都合を考えての選択なのだ。
「仕事を終えたら、またお邪魔しますね」
「これからラーリングのとこ?」
「はい。俺が来ないからって、朝食抜いてたら元も子もないので」
まぁ面倒見の良いグレイが行き来できているのなら、心配はないだろうけど……。ウォーターに別れを告げてラーリングがいる部屋に向かうと、その途中で食後の食器を運ぶグレイに遭遇した。
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